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『テイラー・オブ・パナマ』

大森さわこ
text by Sawako Omori
肉体にこだわるイギリス人、ジョン・ブアマンが頭脳にこだわった快作
 『アメリカン・サイコ』で筋肉美のアメリカ人を完璧に演じたクリスチャン・ベールが、来日した時、おもしろいことを言っていた。「アメリカ人が、なぜあんなに肉体にこだわるのか分からないね。彼らはジムが好きだが、僕たちイギリス人はパブが好きなんだ」。

 でも、なかには肉体にこだわるイギリス人もいるんです。それは監督ジョン・ブアマン。イギリス人には珍しくマッチョ系の男優がお好み。『脱出』のバート・レイノルズや『未来惑星ザルドス』のショーン・コネリー。男の肉体の対決を観念的に描くことで、野性と知性が合体した不思議な映像美を見せてきた。

 でも、さすがのブアマンも老けたせいか、肉体より頭脳にこだわり始めた。この新作、パナマという原始のにおいを残した大地でのスパイと情報屋(=仕立屋)が対決する話。昔のブアマンなら、肉体対決を描いたはずだが、今回はふたりの知恵比べ。タヌキとキツネのだましあい。さて、どちらに軍配が?

 体より、知にこだわることで、ブアマン映画のイギリス的ユーモアが強まった。ジムじゃなくて、パブが好きな(?)イギリス人に戻って作った味のある快作(怪作)。

 もっとも、昔のブアマン映画のマッチョたちは、ジムじゃなくて、野山で鍛えた自然な筋肉美がご自慢でしたけどね。
 
THE TAILOR OF PANAMA
監督・製作・脚本:ジョン・ブアマン 
製作総指揮・原作・脚本:ジョン・ル・カレ
出演:ピアース・ブロスナン/ジェフリー・ラッシュ/ジェイミー・リー・カーティス
2001年アメリカ
1時間49分
配給:ソニー


● 英国スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの小説を著者自らが脚色。社会派監督のジョン・ブアマンが演出したスパイ・サスペンス。ピアース・ブロスナンのセルフパロディも楽しめる、ブラック・ユーモア満載の1作。


http://www.spe.co.jp/movie/thetailorofpanama/


 

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