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『レクイエム・フォー・ドリーム』

清水 節
text by Takashi Shimizu
次のステップへ踏み出した“新時代のキューブリック”
 過激なヴィジュアルが売りの作品は視覚的イベントに終始するケースも多いが、前作『π』同様、ダーレン・アロノフスキー作品は違う。世界の秘密を数字だかで解明しようという呪縛にハマリ、やがてある境地へと達する主観映像で“新時代のキューブリック”とも称された彼の2作目は、その名にたがわず次のステップへ踏み出した。

 テクニックにこだわりつつも、彼の興味の対象は、あくまでも人間。心の満たされない現代人が、“不毛な癒し”にハマりゆく症状を化学的ともいえるような徹底した分析的な主観映像で体感させる。キューブリックは人間の業を冷徹に突き放して捉えたが、アロノフスキーは性懲りもない愚かな人間の主観になってみせる。たとえばキューブリックは、向かって歩いてくる人物をブレのない後退移動で静かに追い続けたが、アロノフスキーは俳優の身体に取り付けた特製カメラ装置で、前進移動や後退移動を見せる。それは、神の視点に立って人間を俯瞰したキューブリックに対し、人間の脳髄に入り込んだ世界観を創出しようとするかのよう。そんな映像が、作曲におけるサンプリングやデザインにおけるコラージュのように合成、生成され、あらゆるドラッグ的効果にのめり込んでいく過程のイメージを醸成する。

 キューブリックは宗教的ともいえる光のシャワーでトリップを表現したが、アロノフスキーはテレビ、セックス、ダイエット、ドラッグといった現代人の拠り所を素早く積み重ねたショットの過剰な繰り返しで表現してみせるのだ。
REQUIEM FOR A DREAM
監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー
原作・脚本:ヒューバート・セルビー・ジュニア
出演:エレン・バースティン /ジャレッド・レト/ジェニファー・コネリー
2000年アメリカ
1時間42分・R-15指定
配給:ザナドゥー


●『π』で高い評価を得たダーレン・アロノフスキー監督の最新作。麻薬に堕ちていく人々の壮絶な姿を、ドキュメンタリー・タッチで描写する異色ドラマ。エレン・バースティンは今作でアカデミー賞にノミネートされた。


http://www.requiem-jp.com/


 

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