この映画の前半は、ホラー映画といっていいと思う。人間にそっくりな、だが明らかに人間ではない異物が日常に侵入する恐怖。ハーレイ君の嘘くさい笑顔の相乗効果もあってか、スピルバーグが本来最も得意とする、静かで不気味なタッチのサスペンスが存分に堪能できる。磨りガラスの向こうから、プールの底の水中から、じっとこちらを見つめる人造人間のショットは、スピルバーグの作中でも1、2を争うほどの、恐ろしく、同時に美しいイメージではないだろうか。
ロボット少年の流浪を描く中盤以降を、単に“お涙頂戴の母子もの”と決め付けるのは簡単だ。だが、スピルバーグが商業的な要請ではなく、あくまで個人的動機でやっているのだとしたら、この監督は世界No.1の商業作家でありながら、少年期のトラウマを生涯しつこく問い返す、鬼気迫る芸術家でもあることが明らかになる。テーマは言うまでもなく、“崩壊した家庭”と“愛情に対する飢え”であり、彼が16歳の時に離婚した両親の、長期間にわたる不仲という体験が、いまだに彼の映画に影を落としているというわけだ。絶対に手に入らない愛情を求めて、ついには身投げさえするロボット少年に、スピルバーグは完璧に自分を重ねている。100何十億円規模の超大作のくせに、やってることは河瀬直美と同じじゃねえか、スピルバーグ!
よく考えてみると、この映画の後半部分には生身の人間がまったく登場しない。子供ロボットと、クマロボットと、超未来の擬似ヒューマノイドが、静寂の世界で語り合う。そんなシュール極まりない場面が、この夏、世界中の何千というスクリーンに平然と映し出されると思うと、『A.I.』という作品の異様さについて考えずにはいられないのである。 |
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©2001 Warner Bros.&Dreamworks.LLC. |
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A.I. ARTIFICIAL
INTELLIGENCE
監督・製作・脚本:スティーブン・スピルバーグ
出演:ハーレイ・ジョエル・オスメント/ジュード・ロウ/フランシス・オコナー/ジェイク・トーマス
2001年アメリカ
2時間26分
配給:ワーナー
● 故スタンリー・キューブリック監督の遺志を引き継ぎ、スティーブン・スピルバーグ監督が完成させたSFファンタジー。A.I.(人工知能)を持つ最新型ロボットの少年デイビッドを待ち受ける運命を描き出す。

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