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『ポエトリー、セックス』

高橋諭治
text by Yuji Takahashi
気鋭の女性監督が放つ、性の絞殺
 何者かに殺された女子大生が遺したエロティックな“詩”が、犯人探しのヒント、すなわち一種のダイイング・メッセージになっているという趣向のサスペンス・ミステリー。恥ずかしながらおよそ詩心とは縁遠い筆者にとっても、大いに引き込まれる1本であった。

 ベリーショートの髪型が真っ先に目を引く主人公ジルは、クロコダイル・ダンディーがそのへんを散歩していそうなオーストラリアの山奥に住む孤独な女探偵。そんな彼女が殺人事件の解明に乗り出したはいいが、悪女の匂いがプンプンする美貌の怪人物ダイアナと肉体関係を持ってしまい、さらなる迷宮へと足を踏み入れていくというものだ。

 『氷の微笑』のマイケル・ダグラスを例に挙げるまでもなく、探偵または刑事といったキャラクターが美女の罠や誘惑に絡め取られるのは、この手のジャンルのセオリーといっていい。いかなるセクシー美女にも惑わされず、毎度見事な強さを発揮するスティーブン・セガールのようなタフガイは、ハードボイルドの世界にそぐわない例外的な生き物といえる。

 そんな誘惑する者とされる者の“お約束”を、ちょっと記憶にない形で提示してみせるのが『ポエトリー、セックス』だ。一見すると男VS女の構図が女VS女に変わっただけのようだが、本作の主役ふたりの関係はベッド・シーンからして相当屈折している。女探偵の上に乗った殺人容疑者(少なくとも観客にはそう見えるはずだ)のダイアナが、相手の首を執拗にまさぐっては締め上げる行為の危うさ。これ以外にも、普段は革ジャンで完全武装している女探偵がそれを脱ぎ捨て、意外なくらいふくよかな全裸をさらしたときのギャップの大きさなど、ギョッとさせられるシーンが少なくない。こうした描写がいちいち女探偵の無防備さ、容疑者の妖しさを増幅させ、両者の関係を複雑怪奇かつスリリングなものにしている。そのぶんクライマックスに乱入してくる男の性的暴力は、呆気にとられるほどシンプルで直情的に描かれている。気鋭の女性監督が放った本作で、性の絞殺、いや考察にふけってみてはいかが?
THE MONKEY'S MASK
監督:サマンサ・ラング
原作:ドロシー・ポーター
出演:スージー・ポーター/ケリー・マクギリス/アビー・コーニッシュ/ブレンダン・カウエル/ジム・ホルト
2000年オーストラリア
1時間33分・R-15指定
配給:アスミック・エース


●『女と女と井戸の中』で世界中から注目を浴びたサマンサ・ラング監督が放つ官能的なサスペンス・ミステリー。松尾芭蕉の俳句にインスパイアされたというドロシー・ポーターの原作を、紫やピンクを多用した映像で作品の世界観を表現していく。


http://www.poetrysex.com/


 

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