『案山子〜』は、伊藤潤二の漫画を3作ほどベースにした純正ホラーであり、ショッカーだが、女たちの愛憎が恐怖を呼び込む点で古典的な怪談映画とも言える。演出は“和製ジョン・カーペンター”と言われている鶴田法男。この人の得意分野だ。
兄をひとりの男として愛する独占欲の強い妹・かおる(野波麻帆)と、その妹に邪魔されて現世では報われぬ恋に身を焦がして死んだ不憫な娘・泉(柴咲コウ)の亡霊が、青年を巡って闘う世に恐ろしき恋愛バトル。要するに、売り物の“KAKASHI”より女の情念の方が怖いのである。
亡霊が映画の要所を制するのは当然だが、この映画に精彩を与えるのは生きた女・かおるの方。兄への恋慕の強さは半端ではなく、行動に露骨に現れている。かおるが初めて村を車で訪れるとき、村への通り道のトンネルの前を行き過ぎたと知るや、一旦バックしてスーっとトンネルの中に進入していく。そのタイミングが鮮やかだ。怖くないのか? そのトンネルの先がなぜ正しい道と確信出来るのか? 亡霊が呼び込んだと言うより、兄への恋慕(明らかに近親相姦だ)がさせるものと解釈すべきだろう。その後の彼女の行動、言動の大胆さが全て納得できるいいシーンだった。娘の復活に燃える母親(りりィ)も合わせ、3人の女の情念が全編にほとばしるからこそ、この映画は怖い。その分だけ周囲の男たちは単に無気味に映されているだけになってしまった感がある。例によってユーモアがほとんどない。田中要次のカカシ巡査はその足りない部分を補う唯一の存在として出色の出来だと思うが、もっと性格を書き込んで、出番を与えてほしかったというのが本音だ。
鶴田監督はエンターテインメントな大作が撮れる人だと以前から思っているのだが、今度は大スターをずらりと並べた芝居中心の作品を撮ってほしいものだ。合作はそのためにあるのだから。 |
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監督・脚本:鶴田法男 原作:伊藤潤二
出演:野波麻帆/柴咲コウ/グレース・イップ/松岡俊介/りりィ/河原崎建三/田中要次
2001年日本、香港
1時間26分
配給:マイピック
●伊藤潤二の原作漫画を『リング0 バースデイ』の鶴田法男監督が映画化。連絡の途絶えた兄を探しに不気味な山村へやってきた女性が、不可思議な事件に巻き込まれていく。
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