「FILM」
「DVD」
「VIDEO」
「SOUND TRACK」
「BOOK」
 


 
『g:mt』

清水 節
text by Takashi Shimizu
アンチ・ハリウッドへのリベンジを刻む、正真正銘の英国映画
 昨今、イギリス映画の勢いのひとつには“ハリウッド化”という傾向が確かにあった。それはサウンドに乗せて刺激の強いヴィジュアルを見せるという視覚的な方向よりも、作劇術に現れた。どんよりとしたあの国の空のように、社会的にも閉塞的な状況を“音楽”というキーワードで解き放った『ブラス!』にも『フル・モンティ』にも『リトル・ダンサー』にも共通するもの。それは明らかに、ハリウッド的なハッピーエンディングを用意したことだろう。

 けれども、50年代末から60年代半ばの“怒れる若者たち”といった運動に代表されるような、リアルを志向し、その怒りが高じて皮肉や笑いへと転化する作風にこそイギリスらしさは秘められていた。前述した3本の大ヒット作は、皮肉と笑いのツボは押えつつも、写実よりも娯楽を優先した物語性に特徴があった。ハリウッド市場でも成功したのではなく、あらかじめ世界標準を視野に入れて作られていたのだ。今年のカンヌ映画祭の会期中には、ケン・ローチ監督がイギリス映画のハリウッドへの“盲従”に警鐘を鳴らすコメントさえ発表していた。

 そんな折、正真正銘といっていい“痛い”ブリティッシュ青春映画が登場した。『g:mt』のはじまりは一見『トインレスポッティング』風。スピード感のある映像で、恐れを知らない若者たちが社会へ出ていく様が元気よく描かれる。未来はすべて自分たちのもの。夢と希望に満ちた人生。しかし、やがてドラマは現実にぶつかり、『GO NOW』的深刻さへ。仲間のひとりが事故に遭って重症を負い、車椅子生活を余儀なくされるあたりから、彼らの現実感は変化していく。人生とは、思うようにはいかず、複雑きわまりなく、だからこそ、本気で向き合わないと押し流されてしまう大河のような流れ。けれども、創り手の姿勢は、決して厭世的にならず、人生に肯定的でさわやかなのだ。この正統派ブリティッシュ・ムービーのタイトルには「時が刻まれ始める街」「グリニッジの厳しい現実」という二重の意味があるという。アンチ・ハリウッドへのリベンジは、ここから刻まれ始めるかもしれない。
 
GREENWICH MEAN TIME
監督:ジョン・ストリックランド
脚本・出演:サイモン・ミレン
出演:アレック・ニューマン/メラニー・ガタリッジ/ジョージア・マッケンジー/キウェテル・イジョフォー/スティーブ・ジョン・シェパード
'99年イギリス
1時間58分・R-15指定
配給:東宝東和
6月16日(土)公開


●ロンドン郊外の街グリニッジを舞台にした青春映画。劇中にも登場するクラブユニット“g:mtバンド”が演奏する主題歌をはじめ、全編に流れる音楽も要チェック。


http://gmt.eigafan.com/


 

「スロウトレイン」に掲載の記事・写真・カット等の無断転載を禁じます。© Works m bros.