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『ドリフト』

加藤久徳
text by Hisanori Kato
ドキュメンタリーのように生々しい壮絶アクション!
 この映画には大きなクライマックスが2つある。それも連続している。ひとつ目は、香港の下町にあるアパートの真っ只中で繰り広げられるヒットマン同士の銃撃戦。もうひとつは、場所を九龍駅構内に移行して警察特殊部隊も交えて展開される攻防戦だ。共に“壮絶”という形容動詞以外は似合う言葉が思いつかないぐらい凄まじいものがある。ただし、自分が気に入ったのはアパートの方だ。

 傭兵あがりのヒットマン(ウー・バイ)と、彼を利用したうえで殺害を企てるラテン系殺人集団が、コンマ一秒を争うような殺し合いをする。アパート側面を忍者のように動き回る、香港映画十八番ワイヤー・ワークのアクションはスタジオ撮影の作品ではなかったものだ。安全第一のハリウッドと違い、映画を面白くするためなら命を賭けるようなバカな連中だから、現場の恐さを想像するだけでゾッとする。ツイ・ハークはハリウッドで満足できるアクションが撮れなかったから、故国に戻ってこれを撮ったのだろう。それでもこのシーンで自分が高く買うのは、なんと室内シーンの方だ。

 戦う両者は互いにアパートの構造を調べつくし、相手を陥れようと罠を張る。前述した“忍者のように”戦うのは、まさにこのアパート内の方だ。生活感がプンプンする空間での殺し合いは、香港流らしくアップテンポでスピーディなカッティングだが、見方を変えるとドキュメンタリーのように生々しい。時折見せる静寂にそれがあり、本当は長い長い戦いのはずだ。このシーンが最後のクライマックスであってほしかったな。それでは、最後のクライマックスに特殊部隊隊長役で特別出演するガオ・ジェ(ホウ・シャオシェン作品で有名な性格俳優)の出番がなくなってしまうから、まずいのだけどね。
 
TIME AND TIDE
監督・製作:ツイ・ハーク
主題歌・出演:ニコラス・ツェー
出演:ウー・バイ/アンソニー・ウォン/ジョベンティノ・コート・リモティギュー/キャンディ・ロー
2000年香港
1時間52分
配給:ソニー
公開中


●『男たちの挽歌』シリーズなどで人気のツイ・ハーク監督最新作。裏の世界に生きる男たちの壮絶バトルを、香港人気俳優の豪華共演で描き出すクライム・アクション。


http://www.spe.co.jp/movie/drift/


 

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