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『メトロポリス』

加藤久徳
text by Hisanori Kato
原作を大胆に改編し、21世紀最初の名画を誕生させた大友克洋
 手塚治虫が戦後間もない'49年に書き下ろした漫画を、『AKIRA』で有名な漫画家・大友克洋が脚色。本作の成功の大半は彼の脚色の力による。演出面も含め、よくもここまでと言えるくらい、大幅な改編をしている。彼ひとりで改編を決めたとは思えないが、それでも、それ相当な度胸を必要としたことだろう。

 人間とロボットが共存する近未来の大都市“メトロポリス”を舞台にした華麗にして壮大なラブ・ストーリー。おっと、すでにこの紹介の時点で原作とはかけ離れている。どこがどう違うか羅列しても意味はないが、しかし、原作では両性具有の人造人間ティマ(原作での名前はミッチイ)を女の子に変え、男の部分を原作では登場しないロックに置き換えたのは評価すべき。終戦後の青少年向けに書かれた原作を、50年以上経った21世紀の不特定多数の劇場観客に焦点を広げるのだから、ラブ・ストーリーにするのは当然の処置だ。大友は脚色にあたって、フリッツ・ラングの無声映画『メトロポリス』を骨格として取り込んでいる(と言うより、テア・フォン・ハルボウの原作の方だ)。ニヒルな人物描写はそのためであり、前述した“相当な度胸”とはこのへんにある。手塚はラングの映画を観ないで原作を書いたが、さて観ていたらどうなったろう? 大友が50年後にその答えを出したのだ。しかし今作は、2つの原作を知っていようと知っていまいと、鑑賞にはなんら妨げにならない。書いている本人はどうかって? 端的に言えば、泣けた(例によってだが)。21世紀最初の名画の誕生と言いたい(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』の方だと言う人もあるだろうけど)。
 
 最後にもうひとつ。手塚の原作にあるモダニズムを強調するのは本多俊之の音楽。優れたスコアだと思う。きわめてラング的な画面構成を、しっかりと手塚の世界に踏みとどまらせたのは、彼の音楽のおかげである。
©手塚プロダクション/METROPOLIS製作委員会

監督:りんたろう 原作:手塚治虫
脚本:大友克洋 音楽:本多俊之
声の出演:井元由香/小林桂/岡田浩暉/富田耕生/石田太郎/若本規夫/滝口順平
2001年
1時間47分
配給:東宝
公開中


● 人間とロボットが共存する近未来都市・メトロポリスを舞台に繰り広げられるSFドラマ。故・手塚治虫が遺した名作を、日本アニメ界を代表する2大アーティスト、りんたろうと大友克洋が映像化した話題のアニメーション大作。


http://www.metropolis-movie.com/


 

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