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| 『いのちの海 Closed
Ward』 |
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加藤久徳
text by Hisanori Kato |
| ≫ “完璧な死刑囚”安岡力也を観よ! |
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日本映画史に関わる重要な俳優が10数人も出てくる、近頃の日本映画には珍しいほどの豪華版だ。製作者には悪いが、作品のテーマよりそちらに目がいった。その中で一番目立つのは“極悪人”を演じる安岡力也である。
イタリア人の父と日本人の母を持つハーフの彼の容貌は濃く、恵まれた体躯は近年ウエイトを増し、その迫力は半端でない。16歳の時の主演デビュー作『自動車泥棒』('64)の彼はスリムでハンサムだったが、あくまでも昔の話。この30年間に彼が脇役として演じてきたのは、コワモテを前面に出し、卑劣で残酷で、女を犯すのは朝飯前という鬼畜が多い。最後は大抵無残に報いを受ける、というのが彼のキャラとなっている。
先日、千葉真一主演の『少林寺拳法』('75)を見る機会があった。懲りない少女レイプ魔の彼は、怒った千葉の手で麻酔なしに去勢手術をされていた。恐怖の悲鳴をあげる彼の姿には、哀感も滑稽味も感じない。極悪人には当然の処置であり、彼が銀幕に映ると、処刑台に上がる“死刑囚”を見る見物人と同じ心境になるから不思議だ。当然のことながら出演作はバイオレンス主体の男性映画が中心なのだが、その彼が人道主義あふれる人間ドラマに目立つ役で出演したのが本作だ。
彼が演じるのは精神病院に入院するシャブ中のヤクザで、またもやレイプ魔である。犠牲者はヒロインの上良早紀。本作には不釣り合いなほど凄惨なレイプ・シーンになっていて、この時点で映画は彼のモノとなった。巻頭シーンでは名優・中村嘉葎雄に刺殺(処刑)される厚遇を受け、その完璧な“死刑囚”ぶりは、この作品の叙情的なムードを要所要所でブチ壊す。本来作品が訴えているヒューマニズムまで希薄になった感がある。しかし、それは彼のせいではない。これが長編映画初演出である監督が、ズラリと並ぶ名優たちに対して“名演技”を要求したためではないだろうか。ドキュメンタリー畑出身なのだから、もっと距離を置いて、傍観の姿勢を取るべきだった。こういう芝居演出の展開になれば、監督無用の“死刑囚俳優”安岡力也の独壇場になるのは、当然の結果であったと思う。
前述したように、今回の彼は完璧なのである。 |
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