『花様年華〜』は、めくるめく官能で酔わせてくれるうれしい作品だ。しかも、匂い立つような男と女の色気を終始漂わせながらも、上品さを失わないから、よけい好きになる。しかし、正直にいえば、この絶品の酔い心地は、抑制の効いた不倫を演じるマギー・チャンとトニー・レオンの好演の賜物だ。もちろん、光と影を巧みに操り、妖しげで儚げな70年代香港の路地裏を映した映像もかなり貢献してはいる。しかし、やはりウォン・カーウァイ監督は斬新な映像派であっても、ストーリー・テイリングはまだまだ。それが証拠に、本作も最後の最後で、詰めが甘い。それを補って余りあるのが、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を獲得したトニーの苦悩の男であり、首の痛さをこらえて多彩なチャイナ・ドレスを身にまとったマギーの成熟した女性の美しさなのだ、と思う。
それにしても、俳優ふたりの監督への信頼度はすごい。「彼とはかけ出しの頃からいっしょに仕事をしてきた仲だから、時々はどうしても組みたくなるの。今回は、昔よりずっと成長して熟練したと思うわ」(マギー・チャン)。「何度組んでも、必ず僕の新しい顔を引きだしてくれる。刺激的な存在だ」(トニー・レオン)……。
この熱い思いと絆があればこそ、マギーもトニーも持てる才能を余すところ無く発揮したということか? やはりカーウァイは香港カリスマ監督なのか? 私個人としては、好きだけど“もう少しまとめる力を!”といつも思うのだが、要求しすぎかしらん? |
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