'84年頃の北イングランドの炭坑町を舞台に、バレエの魅力に取りつかれた11才の少年が、ロイヤル・バレエ学校進学をめざして奮闘する姿を瑞々しく描いた秀作だ。最近の英国映画の秀作と言われる作品は、『ブラス!』や『フル・モンティ』に見るように、背景には失業や労働者ストライキなどの社会問題が常に付きまとう。この映画も背景に炭坑労働者のストライキがあり、少年の父と兄は組合の急先鋒の役割を持って登場する。はっきり言って食傷気味の感を最初に抱くのだが、シナリオは過去を踏襲していなかった。
少年は家族がどんなに組合問題で苦しんでいようと、安易に家族の犠牲になろうとせず、夢を捨てない。父を騙してでもバレエの練習に打ち込んでいく。少年が観せる日々の努力は、この映画の中で一番重要で感動的だ。アメリカ映画ならば、始めから才能を持つ主人公が時の流れの中で成長する部分を流れるような編集であっさりと説明し、恋愛や障害に敢然とぶつかっていくところを核心に置いてドラマチックな若者向け映画に仕立て上げる。本作はそんなご都合主義なドラマ作りはしていない。記録映画大国・イギリスらしく、大人が納得するように、アメリカ映画が省略する部分をドキュメンタルに投影するから説得力がある。
一見、イランの児童映画を思わせるところもあるが、全編にほのみえるのはブリティッシュなロック感覚。バレエをめざす少年を主人公にしていても、作り手の音楽的感性を隠す気はないようだ。 |
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