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『キンスキー、我が最愛の敵』

加藤久徳
text by Hisanori Kato
“恋人”を伝説化するために…
 噂ではかねがね聞いていたけれど、いざ現物を見てみれば“なるほど”と感心することがよくある。しかし、“まさか、ここまで”と仰天させられることなど滅多にあるものではない。“ドイツの鬼才”ヴェルナー・ヘルツォークと“世紀の怪優”クラウス・キンスキーの関係は、世人にはとうてい理解不能な傷つけあう恋人同士であり、修羅場のように気違いじみた撮影現場は、二人にとって公然の“ラブホテル”だったのかと思い知らされた。

 二人のコンビ作は5本を数え、それぞれの逸話は知っているつもりでいた。特に『フィツカラルド』('82)でのトラブルは、以前に『夢の重さ』という、製作秘話の証言で構成された記録映画を見て茫然とした記憶があるが、キンスキーの狂気ぶりは出ていなかった。ヘルツォークが語りべとして登場する『〜我が最愛の敵』にはそれがある。

 しかし、彼が13才のとき、同じアパートにキンスキーも移住していた事実を朗々と話すときの嬉々とした姿には、怪優死して8年も経っているとは思えぬ、今も変わらない熱い恋愛感情が見てとれる。それだからこそ、真に迫った彼の証言と、残された本物の映像に対して信用することが出来ない部分がある。

 ジャンル的にはドキュメンタリーだが、映画史の彼方に埋もれるはずの“恋人”を、“世紀の名優”として伝説化するためにヘルツォークが作ったプロガバンダ映画のように、僕には思えるのだ。
MEIN LIEBSTER FEIND
監督・出演:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:クラウス・キンスキー
   クラウディア・カルディナーレ
   エーファ・マッテス
1999年ドイツ=イギリス合作
1時間35分
配給:パンドラ
12月16日公開


 

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