原作者の浅田次郎が、「映像化されれば、私の小説の中で一番の感動を呼ぶでしょう」と語った映画だ。いつのコメントかは知らないが、そんなことは作ってみなければ判らない。前作の『鉄道員(ぽっぽや)』を観たときは、健さんを中心とした役者陣のミスキャストに腹が立ったものだ。
しかし、今回は違っていた。全部がいいわけではないが、親子を演じる八千草薫と時任三郎は秀逸だ。重い心臓病を患い、寝たきりの病人を演じる八千草薫の好演は特に光る。寝たままの演技というのは決して簡単ではないのだが、八千草薫の寝顔にも笑顔にも、強い母性を感じてグッときた。“感動した”のだ。可憐な娘役で売っていた八千草は55年のキャリアを持ち、もうすぐ70才。年を取らないオバケのような人だったが、寝たきりの役が似合うようになってしまったということか…。
脳腫瘍で倒れたころの大女優・田中絹代が病床で、「台詞が喋れず、動かなくても務まる役があるかしら」とつぶやいたという。八千草本人はまだ五体満足であり、劇中では台詞も喋る。しかし、映画の彼女を観ていると、まるで晩年の田中絹代そっくりだ。母親を演じる絹代には優しさと可愛らしさの両面が滲み出て、そこが僕のお気に入りだったのだ。八千草の表情に絹代の面影を重ね、人知れず涙したことは反則だが、それはどうしようもない。 |
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