不登校を繰り返す中学生の少年が、九州の屋久島までヒッチハイクの旅をする。彼が旅先で出会う人々を通
じて成長していく過程を描いたものだ。ところが、この映画は十五才を描いてはいない。少年が遭遇する“大人たち”を描いている。
『男はつらいよ』シリーズの満男にウリ二つな本作の“十五才”は、現代に生きる普遍的な十五才ではなく、あくまでも山田監督がイメージしている愛すべき十五才にほかならない。当然、旅先で少年が出会うのは、彼が逢うに相応しい善良な大人という図式になる。少年が出会う大人は、先へ進むほど問題を抱えた人たちが登場し、彼らは少年との交流で確実に変化を起こす。大人たちの心のとまどいを情感豊かに描くのが山田監督の手さばきであり、要はいつもの《山田節》なのだ。
しかし、今回の山田節には規格外が登場して場面をさらう。丹波哲郎だ! 彼が演じるのは“シベリアの鉄”とあだ名される豪放な老人で、御年78才とは思えない軽妙な演技に脱帽!! 少年同様に観客まで振り回す。凄い毒っ気だ。元々、彼の本領は見掛けの重厚さとは裏腹な明るい軽薄さで、多分に本人の素の部分が強い。山田もそこを狙ったのだろう。シリーズ特有のお説教映画に変わりはないが、役者1人で映画全体の印象まで変わってしまうという好見本ともなった。 |
 |
|