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『倦怠』

高橋諭治
text by Yuji Takahashi
ドライな女と、壊れた男
 アルベルト・モラビアの小説は『軽蔑』『暗殺の森』などを除けば、たいがい退屈なエロチック・サスペンスとして映画化されている印象がある。そんなわけで気乗りせずに見た『倦怠』だが、これが痛烈なまでにスリリングな快作に仕上がっている。気取った文芸ロマンスどころか、この凶暴さはほとんどサイコ・サスペンスの域に達してますな。

 口を開けば理屈をこねる若き哲学教授が、老画家を腹上死させた少女とベッドイン。異様に無口で、まったく感情を露わにしない少女にじらされた教授は焦りを募らせ、ストーカーまがいの勢いで彼女への猛アタックを繰り返す。お世辞にも美人とはいえず、セックスにしか情熱を燃やさないドライなヒロイン像は、いかにも異色。友人や恋人と本作を見れば「あの子、いったい何なの?」という話が持ち上がること請け合いである。

 しかし冷静に視点を変えてみると、この映画は男の立場、すなわち教授の側を掘り下げるべき作品なのかもしれない。彼の目的は少女を“支配すること”であって、自尊心を満たして自分の存在意義を確かめたいだけ。自分の殻の中で鬱屈した男が、一直線に壊れていく暴走劇というわけだ。これで彼が人生を見つめ直すようになれば、奇妙なヒロインが天使のようにも見えてくるのだが、映画はそこまで描いてくれない。何て残酷なのか。それにしてもちょっと走れば済む距離を、ひたすら車で駆けずり回る姿が怖すぎるぞ、シャルル・ベルリング。
L'ENNUI
監督:セドリック・カーン
出演:シャルル・ベルリング
   ソフィー・ギルマン
   アリエル・ドンバール
1998年フランス
2時間
配給:セテラ
10月28日公開




 

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