長い間、山田洋次監督の助監督として大船撮影所で働いてきた阿部勉の監督デビュー作である。山田の弟子たちは監督デビューするとき、大抵、山田が原案か脚本を書いているのだが、この映画は山田耕大がオリジナルとして書いている。そのせいか、松竹得意のホームドラマでありながら登場人物は善良な人より嘘つきが多く、いつもの大船タッチと違う。
第一、合理化を推し進める会社が作る映画にしては妙に生々しい。リストラで首になり、社宅を追い出された男とその一家が、再生のために奮闘努力するというストーリーだが、この映画は時代のあおりで不幸せな憂き目にあった。松竹が製作、配給して全国チェーンの興行にかけるはずのものが、昨年、松竹邦画チェーンの廃止のために小屋(劇場)を失い、“オクラ”寸前までいった。リストラである。
今年2月、有志の努力で仙台と鳥取の松竹系2館で先行公開され、今回やっと正式公開される。映画のストーリーが、その、映画本体の行く末を暗示させたのは珍しい。脚本も演出も“出来がいい”から陽の目を見られたのだ。しかし、山田洋次の新作『15才
学校W』で、7人もいる助監督の末席に阿部の名を見たとき、暗澹とした思いにかられた。彼の故郷、大船撮影所も既に売却され、今はない。 |
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