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| 『天井桟敷の人々』
山田宏一 |
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小川智子
text by Tomoko Ogawa |
| ≫ 採録 ―― 映画の肉体に入り込む格好の手段 |
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遠く遠く遥か彼方に輝いていたあの一本の映画が、一冊の本によって時空を超え、私たちの手許に降りてきてくれた。
評論とインタビュー、人物データ、そしてシナリオ採録で構成されたこの本は、まるごと山田宏一さんを濾過して抽出された映画『天井桟敷の人々』の再現である。ご自身が中学生の頃に初めてこの映画を観ためくるめく体験、その後何度も繰り返し観るうちに、「次にどんなシーンがくるか、どんなせりふが出るか、すっかり暗記してしまったくらいだ」.....と、ピエール=フランソワ・ラスネールのせりふがすらすらと日本語で叙述される。実際に山田宏一さんがすらすらとペンを走らせておられる姿が、何となく目に見えてくるから不思議。山田宏一さんの文章を読んでいると、映画に出会えたこと、その映画に出会えた幸せを表現する批評に出会えたこと、と、二度幸せになってしまう。
こんな素晴らしい本を前にして語るのもはばかられるのだが、私には単なる私的な趣味でシナリオを採録していた頃があった。英語は出来ないからせりふは字幕を写すだけ、ト書きは自分なりに観たままといういい加減なものだ。採録は脚本の勉強になると誰かから聞いて始めたはずなのだが、これがいつの間にか、好きな映画を自分だけの懐にしまっておくための密かな愉しみになっていた。人物の動き、画のなかの光と影。自分の言葉で再現する作業は、映画の肉体に入り込む格好の手段なのかもしれなかった。
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ワイズ出版
952円(税抜き) |
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いま、仏語の魔術師ジャック・プレヴェールが紡いだ名せりふの数々が、山田宏一さんに選ばれた日本語で紙上に再現される。のみならず、ト書きが読めるのが私は嬉しい。
「運命の象徴のように古着屋ジェリコが現れ」、「バチストはなおも必死にガランスの馬車を追いかけようとするが、カーニバルの狂乱の渦に呑み込まれて----幕がおりる」。
良いト書きは、簡潔で美しく、時代も言語も国境も超えて、映像を喚起する。 |
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