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『白の海へ』 ジェイムズ・ディッキー

金子裕子
text by Yuko Kaneko
ブラピ&コーエン兄弟で映画化! 日本が舞台の生と死のドラマ
 『白の海へ』は、ジェイムズ・ディッキーの集大成のような作品らしい。というのも、訳者の高山恵氏によれば、本来詩人であるディッキーは、1966年に『For the Last Wolverine(最後のクズリに寄せて)』という詩を書いているという。“クズリ”とは、ツンドラとタイガに生息するイタチのような姿をした凶暴な動物であり、詩の中で作者はクズリに「神よ、俺を死なせてくれ。だが、消し去らないでくれ」と言わせている。

 本書の主人公、マルドロウは、父親に「ハンクガンとクズリの混血」と例えられた男だ。物語は機銃兵の彼が乗っていた飛行機が墜落し、第二次大戦中の日本にひとり投げ出されるところから始まる。生きのびるために、戦火と日本人の目をかいくぐり、人を殺して服を奪い、動物の生肉を食らって、夢にまで見た雪=白一色の世界へたどり着くまでが綴られる。そして、彼が迎えるのは、まさしく作者が憧れる“消え去るのではない死”……。 

 主人公のモノローグは、過去と現在、想像と現実の世界を交錯し、時に詩的な美しい描写に心動かされる。ましてや、彼をブラッド・ピットが演じることになっていると知れば、主人公とブラピが重なり、感情移入も大きい。

「コーエン兄弟といっしょにやるつもり。いま彼らが脚本を書いている最中で、でき上がるのが楽しみ。ただし、彼らはすごく書くのに苦労しているみたいだ(笑)」
 
 
発行=アーティスト・ハウス
発売=角川書店
1000円(税抜き)

 3月の初めに会見したブラッドは、目を輝かせながらこう語っていた。聞くところによれば、北海道がロケ地の候補になっているらしい。もし、実現すれば、ブラッドが日本に長期滞在することになり、ファンとしてはうれしいかぎり。もちろん、それでなくとも、自然との魂の同化を体現する野性的でストイックな主人公をブラピがどのように演じるかだけでも期待は高まるのだが。


 

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