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『映画クルー主義の楽しみ方』 杉原賢彦

清水 節
text by Takashi Shimizu
映画作家は監督だけではない
 映画における作家主義は誤解を招きやすい。なにも作家は監督だけではないのだ。あらゆるパートのクルーの集合体こそ映画であって、小説や絵画や作曲のような個人でも創作可能なアートとは決定的に異なる。最終的に、監督の個性によって束ねられはするものの、専門分野のアーティストやアルチザンが寄り添うことでこそ映画は深みを増す。

 それは、映画というメディアが、一人でも多くの大衆に受け容れられることを目的に創られるものであるからに他ならず、創り手たちのコラボレーションが結実した仕事に、ぼくらは魅せられる。しかし、その専門分野を解説するための言葉は、一般の観客には難解極まりないことも数多い。撮影、美術、衣裳、音楽、脚本といったパートにハッとさせられても、それを言葉に変換する作業は容易じゃない。こうした分野への批評は、映画の作品評以上に書き手の力量が問われる。まずもって、クルーの人脈や経歴的な記述が先行しやすく、そして専門用語を駆使した解説と印象記にとどまりやすい。

 この本は、そうしたハードルを超え、クルー主義で見ることの楽しさをわかりやすく伝えることを目的としたであろうに、書き手のテクニカルへの造詣が表層に留まった感も否めない。 原則的に、一人のクルーを一人の映画ライターが紹介する手法をとるこの本は、海外の研究資料からの引用にすぎない文章も見受けられ、その技術がいかに映画に貢献し、演出を香り立つものにし得たか、という主観に基づく論評に至っていないものもある。
 
 
フィルムアート社
2000円(税抜き)
それでもなお魅力的なのは、やはり映画人への愛にあふれているからだろう。次のステップは、もはや批評を超え、技術的側面から見ることをエンターテインメントに昇華させることにあるのだろう。


 

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