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| 『小津安次郎の食卓』
貴田庄 |
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宇都宮秀幸(編集部)
text by Hideyuki Utsunomiya |
| ≫小津映画の食べ物が“美味しい”理由 |
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古い日本映画に登場する人々の暮らしぶりを観るのが好きだ。特に何かものを食べる場面
に惹かれることが多く、なかでも小津作品に出てくる食事シーンは何度観ても飽きることがない。
本書は、そんな小津映画の“食”にスポットをあてた評論集であり、同時にグルメとして知られた小津監督自身の、食べ物にまつわるエピソードを織り込んだ好著である。(巻末に「小津安二郎直筆グルメ手帖」を収録!)
目次に並ぶ各章のタイトル、例えば「秋刀魚と大根」「ラーメン」「中華まんじゅう」「とんかつ」「鰻」などという文字を眺めているだけで、食欲が湧いてきてしまう。いずれもありふれたメニューだし、ローアングルが主体の小津映画では食べ物が画面にはっきりと映ることもないのに、食べ物の名前と小津という言葉がセットになると、なぜかたまらなく“うまそう”に感じる。その理由が、本書を読んでなんとなく分かった。
本書のなかで著者が丁寧に分析してみせるように、小津にとっての食事シーンとは、
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芳賀書店
2600円 |
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過剰にドラマティックな表現を避けつつ、人生の様々な側面を表現する格好の手段だったのだ。食べ物そのものではなく、それを口にする人間たちの佇まいが素晴らしいのだ。絶妙な状況設定に、飲み食いしながらつぶやくセリフの味わいに、僕は“美味しさ”を感じていたのである。
蛇足かもしれないが、小津映画では食事シーンの舞台となる食堂やレストランのネーミングもいい。「カロリー軒」とか「三来元」なんて、名前だけでも“うまそう”だ。 |
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