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| 『ニコラス ケイジ ハリウッドの野性』
ブライアン・J・ロブ |
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高橋諭治
text by Yuji Takahashi |
| ≫愛すべき“奇人”の素顔 |
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ニコラス・ケイジのフィルモグラフィには分裂症の気がある。大成功を収めた『月の輝く夜に』(87)の翌年に『バンパイア・キッス』(88)なるホラー映画で本物のゴキブリを食う“熱演”を披露。『リービング・ラスベガス』(95)でオスカーの栄誉に輝いたかと思えば、『コン・エアー』(97)などで突如マッチョ路線に転じる。悪趣味ファッションのヤクザ者から、気のいい隣の兄ちゃんまでこなす彼は、演技者としての方向性がまるで欠如しているかのようだ。一定のイメージに縛られたくない戦略か、それともただの奇人なのか?
ニコラス・ケイジの36年間の歩みを綴った本書は、こうした素朴な疑問に答える伝記ものだ。叔父フランシス・フォードの名声が邪魔で本名のニコラス・キム・コッポラを捨てたこと。
あまりにも野心的な役作りゆえに周囲が止めないと“演りすぎ”に陥りかねないこと。長続きしない私的な女性関係を仕事に引きずってしまうこと。ケイジのフィルモグラフィは、かなり屈折した情熱型の人間が、問題山積みの役者人生と格闘した結果
そうなったのだと実感できる。
これを読んでニコラス・ケイジの友人になりたいと考える人は少ないだろう。しかし吸血鬼というキャラクターをこよなく愛し、“僕がゴキブリを食べたからこそ『バンパイア・キッス』は今もビデオ屋に置いてある”などと振り返ってみせる男が、悪い奴とはとても思えないのだ。 |
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