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| 『ぼくの流儀』
大島渚 |
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田中千世子
text by Chiseko Tanaka |
| ≫ 見事な“自己愛の花盛り” |
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交遊録的エッセイの魅力は、語られる人物と同じほど書き手の人柄が見えてくることだ。大島渚の本はちょっと違う。書き手が見えてくるなどという奥ゆかしさははなからなくて、撮影中、川に落ちた助監督(若き日の大島)を美空ひばりがケラケラ笑おうが、『戦場のメリークリスマス』に出演したたけしをスタッフがビート先生と呼ぼうか、たけし先生と呼ぼうかで悩もうと、書き手である大島はひたすらその時の自分へと記憶と意識を集中させていくのである。
それが妙に爽快だ。大島の自己愛は外国の映画祭で一緒になったり、撮影を見学した時に強烈に感じてはいたが、今までは本人がそれを多少とも自制する傾向があったと思う。それが病気をして回復に向かってからは、さっぱりと欺瞞がなくなって自己愛の花盛り。見事だ。
しかし、大島が映画の国際交流に生涯を捧げた故・川喜多かしこさんの思い出を綴る時には、意識が全て彼女に向けられる。インドの映画祭でのこと。寺院に入る外国のゲストが皆靴のまま上履きをはいた時、「かしこ様は上履きなどはかず、草履をぬ
いで白足袋はだしで、しゅくしゅくと歩いておられたのである」と叙述する大島の心は、インドの紺青の空と同じほど美しい。
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