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『クロサワ』 原作:園村昌弘 作画:中村真理子

轟 夕起夫
text by Todoroki Yukio
黒澤明最大のタブー、『トラ・トラ・トラ!』に迫った問題作
 これはなかなか大胆で興味深いコミックである。なにしろ巨匠・黒澤明の“光と影”に迫ろうと、力ワザのアプローチを試みた1冊なのだ。しかし、最初に断っておくが、俳優の土屋嘉男、美術監督の村木与四郎、といった黒澤組の面々を「取材という形で」絵の中に登場させてはいるものの、(彼らをはじめ)クロサワをじかに知る人たちの評価は、「週刊ビッグスピリッツ」連載中から、「捉え方が一面的すぎる」「実際の本人の印象とは遠すぎる」など惨憺たるものであった。なるほど、その点はよく噛んで含んで読むべきだろう。ここに描かれた「クロサワ像」の多くは、あくまでフィクションといえる。が、それでも当コミックが興味深いのは、黒澤明最大のタブー、20世紀FOX製作の『トラ・トラ・トラ!』監督解任事件に正面きって触れているからである。

 太平洋戦争の口火を切った日本軍の真珠湾攻撃。その全貌を中心に日米間で交わされた闘いの悲劇を黒澤明が撮ろうとした『トラ・トラ・トラ!』。だがそれは言うまでもなく幻となった。彼は1968年12月24日、20世紀FOXより監督解任を告げられた。この経緯を黒澤サイドだけでなく、当時のFOX社長ダリル・F・ザナック側からも眺めているのが当コミックのユニークなところだ。「クロサワ像」に問題はあっても、日本とハリウッド映画史に残る、“パールハーバーの謎”以上にミステリアスな出来事を(はじめて)知るにはちょうどよいと思う。ところで「キネマ旬報」6月下旬号には「黒澤映画を読む!」なる座談会形式の黒澤本ガイドがあるが、合わせて、『トラ・トラ・トラ!』の企画から撮影開始までの約2年間、黒澤監督のそばで日本側脚本の英訳と、米側脚本の日本
 
 
日本映画監督列伝(2)
『クロサワ』
炎の映画監督・黒澤明伝

小学館
1800円(税抜き)
語訳を手伝っていた田草川弘氏の「文藝春秋」7月号への寄稿文、さらには近日発売予定の「フィルムメーカーズ・クラシック 黒澤明(仮題)」(キネマ旬報社)などもぜひ読まれたい。特に後者では、このコミックだけでなく、いままで取材のあたわなかった、黒澤版『トラ・トラ・トラ!』のすべてを知る男、青柳哲郎プロデューサーのインタビューも載るという。折しも『パール・ハーバー』の公開の年。我々はいまだ『羅生門』の世界を生きている。


 

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