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第15回 第1部・最終回「フォッグ・シティへ」

第14回「エルヴィス・コステロの黒い帽子」

第13回「マット・デイモン:雨の日の男 3」

第12回「マット・デイモン:雨の日の男 2」

第11回「M・D:雨の日の男 1」

第10回「ゲイリー・オールドマンを待ちながら」

第9回「ダイアナ・クラールのアルファベット療法”」

第8回「ジョニ・ミッチェルの“悲しき酒場のバラード”」

第7回「ジョニー・リー・ミラーの劇場で」

第6回「ケビン・スペイシーと月明かりのビューティー」

第5回「ニコール・キッドマンのショー・ウィンドウ」

第4回「デイヴィッド・クローネンバーグの処方箋」

第3回「ロバート・カーライルの虹色の瓶」

第2回「エドワード・ノートンとお茶を」

第1回「デイヴィッド・フィンチャーの雨降る家」
 





2000.04.01 UPDATE
 
大森左和子
text by Sawako Omori


 



レイン・シティ。それは世界のどこかにある街。
名前通り、雨や雲の日が多い。でも、夜となると、ストリート・ライトが道しるべ。
肩を丸めて歩いているのは監督のウディ・アレン。
彼も出演するジャズ・クラブで失恋ソングを歌うのはエルヴィス・コステロ。
ライブハウスから出てきたのは、監督のデイヴィッド・フィンチャー。
一緒にいたブラッド・ピットとエドワード・ノートンを車に乗せて、帰宅途中。
風来坊ブラッドは別の街にいるが、エドワードは、最近、街に引っ越して来たばかり。
レイン・シティの夜がふけていく……。


 
 
第3回 ロバート・カーライルの虹色の瓶

その夜、人けのない通りを歩いていると、小さな黒い影が走り抜けた。
それは一匹の猫だった。
街頭の明かりに照らされた小さな生き物。
好奇心にかられ、しばらく、その後を追うことにした。
猫はわき目もふらず、小刻みに両足を動かし続ける。
やがて、黒い木造の家に入る。
窓から明かりがもれ始めた。

中をのぞき込むと、小さな猫が
わらを敷きつめた小さなベッドの上で毛づくろいをしている。
白に茶色のまだらが入った猫だ。
細い体で、両方の白い耳だけが異常に大きい。
こちらの視線に気づき、目を見開く。
それは黄金色に輝き、手招きをした。
中に入れという合図だ。
黒い鉄のドアの上には”キャット・マンション”の文字が彫り込まれていた。
このささやかな家がマンション(屋敷)?
マンションの中には木製の棚があり、虹色の瓶が並んでいた。

赤。
黄色。
緑。
青。
紺。
紫。
オレンジ。

明かりの下で、改めて猫の顔を見た。
なんと、ロバート・カーライルに似ている。
「ロバート・キャットと呼んでくれ」
そう言いながら口を両方に思いっきり開いて笑う猫。
それは『不思議の国のアリス』のチェシャー・キャットに似ていた。
「ロバート・ザ・ウィザードと呼ぶ人もいる。すごい発明をしたからね。
虹色の瓶を飲むと夢の国に旅立てる。まずはこれ」

黄色の瓶を指さし、彼は少量をワイングラスで飲みほす。
「目をつぶって、10数えて」
言われた通りにカウントダウンを始める。
そして、目をあけると、猫の姿はなく、人間ロバート・カーライルが立っていた。
『フル・モンティ』に出た時の顔だ。
「俳優は演技力が大事っていうけど、それはウソ。
この虹色の液体を飲むと、何でもできる。さて、今度は紫」

目の前には『司祭』で同性愛の男を演じたカーライルがいる。
そういえば、紫はその手の人が好む色と聞いたこともあったが。
「青は『フェイス』の時。
さて、このオレンジは『ラビナス』。今度はこれにしようか」
再び目を閉じ、数え始めた。
待てよ、『ラビナス』で彼が演じたのは……カニバリストの役。
彼の手がのびてくる。
「さて、準備、OK?」
 
 
今年は『ワールド・イズ・ノット・イナフ』『アンジェラの灰』『プランケット&マクレーン』と新作が続々のカーライル。そんな中でも演技的に一番充実しているのは『ラビナス』。『司祭』や『フェイス』で名コンビを見せたアントニア・バード監督との新作。アクの強いブラック・コメディ『ラビナス』では、なんと人肉を食べて生きのびる兵士の役。アメリカが未開だった時代の山奥のお話。謎めいたカニバリスト役を演じて新境地。彼がこんなに男っぽく見えたことはなかった。そして、オゾマシイ話なのに、その演技はどこか繊細。バードは男のナイーブな部分をとてもうまく描く女性監督だと思う。ところで、昨年の12月にロンドンでカーライル本人に会ったが、気分の変化が激しいとの評判。私が会った日は機嫌がよく、「あなたの映画、全部、見てます」と言ったら、両手でヒシッっとこちらの手を握りしめた。感激性なのだろう。その神経質そうな顔は犬より、猫系だった。というわけで、今回のお話。
 
 
 

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