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第15回 第1部・最終回「フォッグ・シティへ」

第14回「エルヴィス・コステロの黒い帽子」

第13回「マット・デイモン:雨の日の男 3」

第12回「マット・デイモン:雨の日の男 2」

第11回「M・D:雨の日の男 1」

第10回「ゲイリー・オールドマンを待ちながら」

第9回「ダイアナ・クラールのアルファベット療法”」

第8回「ジョニ・ミッチェルの“悲しき酒場のバラード”」

第7回「ジョニー・リー・ミラーの劇場で」

第6回「ケビン・スペイシーと月明かりのビューティー」

第5回「ニコール・キッドマンのショー・ウィンドウ」

第4回「デイヴィッド・クローネンバーグの処方箋」

第3回「ロバート・カーライルの虹色の瓶」

第2回「エドワード・ノートンとお茶を」

第1回「デイヴィッド・フィンチャーの雨降る家」
 





2000.03.25 UPDATE
 
大森左和子
text by Sawako Omori


 



レイン・シティ。それは世界のどこかにある街。
名前通り、雨や曇の日が多い。
でも、夜になると、ストリート・ライトが道しるべ。
ジュリー・クリスティがバーの片隅で過ぎ去った恋の思い出に浸り、
若きブラッド・メルドーが、優雅で隠微なジャズ・ピアノを弾く。
おや、その演奏を聞いているのは、
監督作でブラッドの曲を使った旅人クリント・イーストウッド。
今日もレイン・シティの夜がふけていく。


 
 
第2回 エドワード・ノートンとお茶を

その夜はエドワード・ノートンの家に向かった。
彼は、最近、レイン・シティに引っ越してきたばかりだ。
地図で家を確かめ、小降りの雨の中を足早に歩く。
到着したのはコンクリートの白い高層ビルだ。
入口の前のインターホンを押す。

「どうぞ」
ドアが開き、中に入ると、
エレベーターも白一色。
壁が冷たく光り、よそよそしい雰囲気だ。
ドアを開けたエドワードは、まるで大学院の研究生のようだ。
おっとりした顔で、白のコットン・シャツがよく似合う。
壁の横には大きなガラスが張られ、そこから夜のレイン・シティが見える。
「この眺め、好きなんだ」
街のネオン・サインがまるで星のように点滅していた。
壁は白。インテリアも同じ色だ。
「白はいいね。変化がはっきり分かるから」
そう言いながら、静かな笑顔を見せるエドワード。
「お茶を入れよう。ハーブティーでいい?」

次に目についた白は、指にまかれた包帯。
10本の指をすっぽり覆っている。
「この前、料理で切った」
エドワードは無邪気に笑う。
まさか……10本切ったわけないが。
「お茶、どうぞ」
白いティーカップで出してくれたのは、まっ赤なティーだ。
「特製のハイビスカス・ティー。蜂蜜ぬきの方がいいよ」
よく見ると、包帯にも、ほんのり赤がにじむ。

「レイン・シティはいいね。最近、夜の映画にばかり出たから、当分、太陽の街には住めない。友人ケビン・スペイシーがいた部屋を譲りうけた。彼は郊外に引っ越したからね」
エドワード特製のハイビスカス・ティーは、なんだか、変わった味だった。
白い包帯の上には、前より赤が広がっている。
ほっそりした指の曲線に、一瞬、目を奪われる。
布をまいていても、その雰囲気は分かる。
清潔で、繊細。
重労働とは縁がなさそうだ。
ただ、手首の3本の血管が、ひどく浮き上がって見える。
「この包帯取ろうか?」
赤いティーが、口の中で粘っこくなっていった……。  
 
 
『ファイト・クラブ』を見てから、すっかりエドワードのファンになった。『真実の行方』以来、彼が得意としてきた人格分裂というテーマを個性的なスタイルで描いた『ファイト・クラブ』はすごい。歪んだホワイトカラーの役が本当にぴったりだった。『ファイト・クラブ』の前には『ラウンダーズ』、『アメリカン・ヒストリーX』などに出演し、すっかり“夜の映画”が似合うアクター。だから、レイン・シティに引っ越してもらいました。ケビン・スペイシーは本当にお友達みたい。インターネットで、アメリカのエドワードのサイトを見ると、なんと、ケビンのサイトも紹介されているじゃないか。私、ケビンも好きだけど。そういえば、ケビンの新作『アメリカン・ビューティ』と『ファイト・クラブ』って、実はどこか似ている。でも、説明に時間がいるので、また、どこかで。
 
 
 

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