その夜はエドワード・ノートンの家に向かった。
彼は、最近、レイン・シティに引っ越してきたばかりだ。
地図で家を確かめ、小降りの雨の中を足早に歩く。
到着したのはコンクリートの白い高層ビルだ。
入口の前のインターホンを押す。
「どうぞ」
ドアが開き、中に入ると、
エレベーターも白一色。
壁が冷たく光り、よそよそしい雰囲気だ。
ドアを開けたエドワードは、まるで大学院の研究生のようだ。
おっとりした顔で、白のコットン・シャツがよく似合う。
壁の横には大きなガラスが張られ、そこから夜のレイン・シティが見える。
「この眺め、好きなんだ」
街のネオン・サインがまるで星のように点滅していた。
壁は白。インテリアも同じ色だ。
「白はいいね。変化がはっきり分かるから」
そう言いながら、静かな笑顔を見せるエドワード。
「お茶を入れよう。ハーブティーでいい?」
次に目についた白は、指にまかれた包帯。
10本の指をすっぽり覆っている。
「この前、料理で切った」
エドワードは無邪気に笑う。
まさか……10本切ったわけないが。
「お茶、どうぞ」
白いティーカップで出してくれたのは、まっ赤なティーだ。
「特製のハイビスカス・ティー。蜂蜜ぬきの方がいいよ」
よく見ると、包帯にも、ほんのり赤がにじむ。
「レイン・シティはいいね。最近、夜の映画にばかり出たから、当分、太陽の街には住めない。友人ケビン・スペイシーがいた部屋を譲りうけた。彼は郊外に引っ越したからね」
エドワード特製のハイビスカス・ティーは、なんだか、変わった味だった。
白い包帯の上には、前より赤が広がっている。
ほっそりした指の曲線に、一瞬、目を奪われる。
布をまいていても、その雰囲気は分かる。
清潔で、繊細。
重労働とは縁がなさそうだ。
ただ、手首の3本の血管が、ひどく浮き上がって見える。
「この包帯取ろうか?」
赤いティーが、口の中で粘っこくなっていった……。