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#9 性格がまろやかになったおれが選ぶ今年の映画ベスト1

#8 柔道金世界一、ナンボのもの。オレだって「獣道」金メダルの滝本誠!

#7 ハンニバル・サマー・イン・フィレンツェ

#6 “激しい雨”滝本誠ライブIN東京大学−

#5 出るわ、出るわリンチ系が レイプだ、吊るしだ、カンニバルだ

#4 まだまだリンチの原稿は書ける。以前に何を書いたか忘れているもんね。

#3 “赤い部屋”の歌手ジミー・スコット 極上ライブは魂の血で真っ赤に染まった…

#2 乳頭をおいしくいただくことができた 今日という、すばらしい一日。

#1 NKホールでレズナーは言った。「サンキュー・ベリーマッチ」
 




2000.04.29 UPDATE

滝本 誠
text by Makoto Takimoto


“赤い部屋”の歌手ジミー・スコット
極上ライブは魂の血で真っ赤に染まった…


 よぉー、っと声がかかったので、そちらの方を見ると、トゥナイトの石川次郎さんだった。会社の大先輩であり、こちらが新入社員だったころから、若くしてスター編集者だった。彼はまったく歳をとらない。

 彼と組んでいる女子アナは、ぼくが『自由時間』という今はもうない雑誌の編集者だったとき、アルバイトできていた女性だった。女子アナになるという感じではなく、松屋の横で「タキモトさーん」と駆けてきて、「受かったんです」といわれたときは、キョトンとしたものだ、ナンデお前が? それぐらい地味なコだった。

 あっ、カルチャーを忘れるところだった。石川さんと会ったのが原宿のキーノートのトイレというのがイカしてるだろ? しかも皆並んでいた。ジャズ・ライブ・スポットでは男子トイレに列ができる。隣の女子トイレはスイスイだ。いかに、ジャズが男の世界かはこれでわかる。でも女性客も多かった。ジャズ・ファンの女性はキープ力がいいってことか?

 4月20日、キーノート今宵の出演は、ジミー・スコット。なぜ彼を聞きにきたか、いうまでもなく、『ツイン・ピークス』でデイヴィッド・リンチが最終回に「赤い部屋」で、このスコットに歌わせていて、それ以来、ずっと気になった存在だったからだ。1992年に劇的な復活を果たしたが、リンチは『ブルーベルベット』でロイ・オービソンを復活に導いたように、『ツイン・ピークス』で、ジミー・スコットを復活させた。リンチが復活させた歌手はやはり一風変わったフリークといっていい存在である。

 ジミー・スコットのどこがリンチを魅了したか? それはおばあさんを思わせるおじいさんという外見の特異さであり、極端な腕の長さであり、黒人のカストラートとでも呼ぶべき声の女性的な美しさであろう。その声が歳を経て渋みが加わり、スロウな間のとりかたは、まさにわれわれの感情の憩いと癒しの場へと変容したのである。

 はやいかな、と思って開演30分前に入ったら十分遅かった。空きはドラムキットの横、シンバルが肩につかえるほどのわきのスポットしかなかったのである。スコットまでは3メートルあるかないか。

 最高だった。このままずっと歌い続けてほしいと思うほどすばらしかったのである。『ドリーム』なんて、いまも脊髄のあたりにこびりつく感じで歌声が残っている。入口で彼のCDを売っていて、買えば後でサインをもらえるとのこと、証拠物件が必要なこの連載にはピッタリではないか。

 ジミー・スコットの名前は、『ツイン・ピークス』当時、わが国では誰も知らなかった。そのこともあり、クレジットでレジェンダリー・ジミー・スコットと出て、調べまくったがどこにもその名前がなかった。ライターやっていてでたらめにちかいことを書いたのは、生きているのにジョン・ハートに追悼文を書いたのと、このジミー・スコットを書くに事欠いて「ストリートで歌っているところをリンチがピックアップしたのかもしれない」とどこかに書いてしまったことである。そんなことはいえないのでサインをもらい、手を握り抱き合って(抱いてくれるのである)しまった。

 キーノートには悪いことをした。横むきでステージを見ていて、ビール(ハイネケン)を飲もうと手を出したら、暗がりだったので倒してしまい割れてしまったことである。集めようとして、破片が手に刺さり、うすく血が滲んだ。スコットの魂の血だ、と強がってみたが結構痛いものである。

 ライブの模様は、BSのクルーが撮影していたから、放送されるかも。万が一、ドラムの横にぼんやりした顔が映っていても無視するように。次のライブ詣はクリムゾンか? だれか同伴してくれるコはいますか? 最近先導者がいないと行き着けないのでな、爺は。
(C) illustration by Gogh Imaizumi


今回の押収物件:
ジミー・スコットの
サイン入りCD


タイトルは『holding back the years。レノンやコステロなどロックの名曲のカヴァー。サインは一度書き損じているのが逆にレア。


 

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