ジミー・スコットのどこがリンチを魅了したか? それはおばあさんを思わせるおじいさんという外見の特異さであり、極端な腕の長さであり、黒人のカストラートとでも呼ぶべき声の女性的な美しさであろう。その声が歳を経て渋みが加わり、スロウな間のとりかたは、まさにわれわれの感情の憩いと癒しの場へと変容したのである。
はやいかな、と思って開演30分前に入ったら十分遅かった。空きはドラムキットの横、シンバルが肩につかえるほどのわきのスポットしかなかったのである。スコットまでは3メートルあるかないか。
最高だった。このままずっと歌い続けてほしいと思うほどすばらしかったのである。『ドリーム』なんて、いまも脊髄のあたりにこびりつく感じで歌声が残っている。入口で彼のCDを売っていて、買えば後でサインをもらえるとのこと、証拠物件が必要なこの連載にはピッタリではないか。
ジミー・スコットの名前は、『ツイン・ピークス』当時、わが国では誰も知らなかった。そのこともあり、クレジットでレジェンダリー・ジミー・スコットと出て、調べまくったがどこにもその名前がなかった。ライターやっていてでたらめにちかいことを書いたのは、生きているのにジョン・ハートに追悼文を書いたのと、このジミー・スコットを書くに事欠いて「ストリートで歌っているところをリンチがピックアップしたのかもしれない」とどこかに書いてしまったことである。そんなことはいえないのでサインをもらい、手を握り抱き合って(抱いてくれるのである)しまった。
キーノートには悪いことをした。横むきでステージを見ていて、ビール(ハイネケン)を飲もうと手を出したら、暗がりだったので倒してしまい割れてしまったことである。集めようとして、破片が手に刺さり、うすく血が滲んだ。スコットの魂の血だ、と強がってみたが結構痛いものである。
ライブの模様は、BSのクルーが撮影していたから、放送されるかも。万が一、ドラムの横にぼんやりした顔が映っていても無視するように。次のライブ詣はクリムゾンか?
だれか同伴してくれるコはいますか? 最近先導者がいないと行き着けないのでな、爺は。
