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第1回プロローグ
第2回 『僕はAVをバカになどしていない。“スクリーン主義者”なだけだ!』
第3回 『ピンク映画のパイオニアが手がけたTV動物映画と大阪で遭遇』
第4回 『探検隊なのだから、たまには試写室を抜けて映画館へ』
第5回 『わずか数日で1時間の作品を作りあげるピンクの世界のプロとはそういうものだ』
第6回 『メイキングビデオや一般作など従来のフィールド外で活躍するピンク監督』
第7回 『数々のピンク映画で助監督を務める新進舞台演出家のお手並みを拝見』
第8回 『山形の映画祭で巡りあえた、ピンク映画の始祖的作品2本』

▽最新の『ピンク映画探検隊』へ






加藤久徳
text by Hisanori Kato

 第9回 
『浮気なぼくら』/
『ビースト・シャドウ 暴行の爪痕』

ピンク映画を劇場で見たいから
雰囲気のいい専門館が欲しいよ


 前にも書いたと思うけど、「ピンク映画は映画館(正確には封切り館)で見なければダメだ!」と「P・G」の林田編集長に揶揄されたことがある。業務試写で見るなど、トンデモナイということらしい。映画の仕事をしているから、普段は映画会社の試写室で映画を見ることが当たり前の日常なのだけど、ことピンク映画に関しては、試写室で見ることは難しい。マスコミ試写というものが原則的には存在せず、製作・現場の関係者だけが見る初号試写というものだけが唯一、完成後に見る機会に当たるのだけど、その一回だけの初号を当て込んで見に行くのは(距離的に、時間的に)きわめてやっかいだ。“じゃあ、グダグダ言わずに劇場に行けばいい!”と思うのが当然の理屈のはずなのに、その肝心な劇場が(過去にこのコラムで散々書いたように)、映写、音響、そこに集まる観客のタイプ等々、自分には相性が合わない。これは他の人達も言っていることだから、僕個人のワガママではない。でも、それではこのコラムを何のために書いているのか分からなくなる。やっぱり、読者の人にもピンク映画専門館まで見に行ってほしい。その気持ちに変わりはない。では、どうする?


 昨年、今年と開催された“P−1グランプリ”は、東京・中野にある中野武蔵野ホールを使っての上映会だった。あるいは、今年のピンク大賞授賞式は池袋にある新文芸坐が開催場所だった。共に一般映画の封切りもしている優良劇場であり、当然、女性が一人で鑑賞に来られる雰囲気のいい映画館だ。ピンク映画の封切り館がこんな劇場なら、実験的、かつ意欲的な傾向を旨とするピンク映画(つまり、過去にこのコラムで僕が取りあげた幾つかのアート的な作品たち)も、監督たちが意図したテクニックなり、映像効果をスクリーン上から観客は堪能できるはず。正しい評価がされるはずと思いたい。劇場が改善されないと、福間健二氏などが出版される研究書(たとえば四天王の作品を論評した『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』など)が、いくら御大層な美辞麗句を羅列していようと、空疎な文章にしか受け取れない。第一、書いた人は劇場で鑑賞して、あんな詩的な反応を得られたのかね? 試写室で見たから感銘できたのだろうと、疑問を挟むしかない。それだと、林田氏が言っているような「ピンク映画は劇場で見るべき」とは逸脱してくる。僕らは研究書を読んでも無駄ということになる。フェアじゃない。新しい若い観客が劇場で育たないし、実際、過去の秀作を見たくても、研究書に出てくる作品は僅かしかプリントとして残されていないから、スクリーンで接すること自体が困難だ(ビデオで見られるものもあるけど、それは僕の主義に反する)。これではどうにもならない。雰囲気のいい専門館が欲しいよ。P−1やシネクラブ(四天王評価のムーブメントを起こしたアテネフランセ文化センター等)、映画祭やピンク大賞授賞式などで上映されないと、正しい評価が出来ないのでは、作り手も不憫だと思う。

 今年のP−1は昨年以上に盛況だったと聞いたが、一方では、対抗作品に勝利するために、多くの私設軍団を観客として送り込んで票集めに没頭したとか…。それは昨年もそうだったのだが、これもまたフェアじゃない。軍団などではなく、クールに正当な判断をする一般映画ファンを呼ばなきゃいけない。賑やかなライブ感覚でP−1を盛り上げる目的もあるのだろうが、呼ばれた軍団の人たちが普段も専門館に通ってくれてる人たちなのだろうか? 余計なお世話だろうが、気になるところだ。いずれにせよ、劇場のムードを変えないと、僕も知人、友人にピンク映画の話題作を薦めることが、困難なのである。


 と言うことで、今月。今月もゲイ・ムービーだ。しかも2本立て! かつて最終回に出かけて散々な目に逢った因縁のある劇場だけれど、吉行由実さんの最新監督作品は、1回限りの初号試写を日を間違えて見損なった。そのため、見るためには自動的に因縁の劇場での鑑賞ということになる。いやだけど、仕方がない。出品されるかどうかも分からないのに、来年のP−1まで待つわけにもいかない。では、ゲイ専門館で見るためにはどうするのか?

 1人で見るのではなく、複数で見るしかない。(本来、映画というのは複数で鑑賞するのが健全なのだけどね)。「P・G」では“薔薇族ツアー”というのがあって、読者を中心にした楽しいゲイ映画鑑賞会がある。女性を含め、10人を超えるピンク映画ファンが怒涛のように、男漁りのために参集する専門客の前(基本的には最前列に座る)に隙間なく席を埋め、マン・ハンターたちを排除する。楽しくゲイ・ムービーを鑑賞するために、撃って一丸、いや一致団結するツアーなのだ。時間を見計らって劇場に乗り込むツアー軍団の姿は、なかなか壮観で見応えあり。僕も2度ほど参加したことがある。薔薇族ツアーでは、今回の作品をツアー作品にしたのだが、僕のスケジュールが合わないため、参加は無理。そのため、P・Gの読者である吉永さんという熱心な映画ファンを誘って、この劇場に出かけた。2人並んでればマン・ハンターは近づかないからね。

 男2人でゲイ・ムービーを見るのは久しぶりだ(まあ、女友達を誘うのは無理だな)。かなり以前、無名時代だった頃の脚本家・武田浩介と2人で、飯田橋くららまでピンクのゲイ映画を見に行ったことがある。それ以来のことだ(本人の名誉のために付記するが、武田くんはゲイ映画のシナリオを書くことはあっても、あっちの方ではない。普通のストレートで、普通のスケベである。くれぐれも)。

 と言うことで、今回は前回とは打って変わって、気楽に見られたのである。終了後、僕らが退館する時に注がれる熱い視線も、“お疲れ様〜”とねぎらいの言葉に思えるから僕も勝手なものだ。“あ〜、ノンキにピンク映画を見たいよ” こんなことを書くと、「P・G」や「ピンク・リンク」の編集長に「修業が足りない」と諌められるのだ。




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