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山形の映画祭で巡りあえた
ピンク映画の始祖的作品2本
『モデルと写真家』『女は下着で作られる』
『モデルと写真家』と『女は下着で作られる』の2作はピンク映画でもなければ、劇映画でもない。ジャンル的にはドキュメンタリーであり、PR映画にも相当するもので、しかも1958年に作られた所謂クラシックだ。探検隊的には考古学の分野に属する。つまり『モデルと写真家』に至っては、1962年の『肉体の市場』(小林悟監督)、『肉体自由貿易』(本木荘二郎監督)に先立つエロティック映画(ピンク映画)の始祖と位置づけられているのだそうだ。
この2作は「山形国際ドキュメンタリー映画祭2001」における“亀井文夫特集”で参考上映の形で観客の目に触れた珍しい作品だ。日本のドキュメンタリー映画の名匠である亀井が1955年に設立した会社である日本ドキュメントフィルムで製作したもので、亀井自身は編集のみで製作にはタッチしていないらしい。2作とも1957年から始まった横長の大型映画(シネマスコープ)時代に促されたのか、シネスコ(画面の表記はウルトラスコープ)で作られていて、しかも白黒での撮影だ。なぜだろう? こういう時は文献などを漁ってもっともらしく説明するのが一番無難なのだが、そんなことはせず、勝手に想像してみる(この章のこれ以後の文章はすべて想像だと思ってほしい)。
シネスコで作られたのは、レンズや横長スクリーンの対応が遅れていた地方の劇場での対応が可能になり、いろんなジャンルの作品を大型映画として映画各社が大衆にアピールを開始したからだ。白黒撮影は、単純に考えれば製作費の問題で、高価なカラー・フィルムを撮影のために消費できないと言えるのだが、2作品はテーマが違うので理由は別にあるものと思う。
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『モデルと写真家』
監督:亀井文夫
1960年日本
配給:日本ドキュメントフィルム |
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この1958年は皇太子(今の天皇陛下)の御成婚(結婚は翌年)により、テレビが異常に売れたときで、映画会社はテレビに対抗しようと大型シネスコ映画にスイッチした年であり、同時に、売春防止法にともなって赤線がなくなった年でもある。男たちはどこかでセックスのはけぐちを見つけなくてはならない時だった。露骨な性描写など、大衆娯楽の王者であった映画で表現するなど倫理的には有りえなかったはずだが、戦中戦後に青春期だった若者たちがあらゆる分野で第一線に台頭しはじめた1958年頃は、意識的に高揚期であり、1920年代に似た威勢のよさがあった頃なのだ。戦中戦後、軍部や官憲、進駐軍の圧力に対して抵抗を続けたことで知られる硬派なドキュメンタリストであるはずの亀井が作ったエロティックなドキュメンタリーがどんなものかを見るのは、ピンク映画ファンなら一見の価値があるものなのだと思う。
『モデルと写真家』は、当時、“グラマー写真家”と呼ばれて話題を呼んだ中村正也が小山内治夫と共同演出で作ったドキュメンタリー映画。8人のモデルを使い、海岸やスタジオでポーズをとらせ、おのれの芸術の素晴らしさを天下に誇示するような作品で、芳村真理らがハイブローな姿態を悩ましく見せつける。これが当時はエロと呼ばれたのだ。映画はカラー向きとも思えるのだが、当時の写真家としてはモノクロで表現する方が自然ということになる。今の目で見ると決して面白いものではなく、映像としてのテクニックを感じない。チープすぎる(ゴダールやトリュフォーなどのフランスのヌーベルバーグがやってくるのはすぐあとだが)。これで当時の観客が劇場でエロスだけを感じたなら、興行側の思惑の方が成功したことになる。ピンク映画登場以前に作られた“重要なエロティック映画”という肩書きも一応は納得いく。
『女は下着で作られる』は、下着デザイナーとして一世を風靡した鴨井洋子('91年死去)が監修・演出したドキュメンタリーで、舞台かテレビの役者たちの寸劇もあり、楽しめるが、後半は安っぽいPRドラマ化している。
戦後に強くなったのは女と靴下だなんて言われていた時代に作られた作品だが、その強い女が女性用下着をデザインして、シネスコ画面を覆い尽くすために作ったプロパガンダ映画と言うのが正しいような気がする。それでもこの作品で重要なのは、初代ジプシー・ローズが悩殺ポーズでストリップを演じてのけることで、彼女を見るだけでも風俗史的な価値がある(つまり、山形まで見に行った価値があるということだ)。
なんにしても、鴨井の下着に対する紹介の仕方には力が入っていて、空から降りてくる風船の群れにブラジャーやパンティーがついていたり(1956年に公開され、ヒットしたアルベール・ラモリス監督の『赤い風船』のパロディか)、女学校では中年女教師が強制的に下着検査を実施するシーンがあるなど、鴨井は女性開放とかの反逆的な意図を込めているつもりだろうが、こちらにはエログロにしか見えない。女が作るセクハラ・ドラマの印象強し。2流、3流の役者たちの演技のひどさが鴨井のテーマをかなり歪めているようだ。それでも、アホくさくて楽しめるのも事実。しかし、カラーでないのが足を引っ張り、どこか辛気くさい。でも、その辛気くささは、後に登場する初期ピンク映画に、延面と引き継がれていくのである。
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『女は下着で作られる』
監督:中村正也/小山内治夫
撮影:瀬川浩
編集:亀井文夫
解説:竹脇昌作
1958年日本
配給:日本ドキュメントフィルム |
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