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加藤久徳
text by Hisanori Kato |
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第7回
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『痴漢タクシー エクスタシードライバー』/
『バラードに抱かれて』 |
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数々のピンク映画で助監督を務める 新進舞台演出家のお手並みを拝見
以前にこのコラムにも登場した、新進舞台演出家の森角威之(ピンク映画の助監督でもある)の新しい芝居を、池袋シアターグリーンまで観に行った。彼が主宰する天然工房の第3回公演『ロンリーマイルーム』がそれ。台本も彼で、9月15日の夜の回だった。渡邊元嗣監督夫妻も来場していた。
内容は、あるアパートの1室を舞台に、引っ越しのために集まった孤独な若者たちを主人公にしたもので、彼らの恋愛、友情、人生観をコミカルに描いた群像ドラマ(9人だけだが)である。
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『ロンリーマイルーム』のチラシ。本作にはいまだ健在のピンク女優、愛染恭子も特別出演 |
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群像と書いたのは、1時間50分近くの間、ひとつの部屋の中を9人の人物がノンストップで行ったり来たりするからだ。それを一幕で一気に見せてしまう。引っ越してきた主人公・夏季(NOBU)を中心に、彼の母親・愛子(愛染恭子)、手伝いに来た友人・木下(今野元志)、引っ越し屋でもあるもうひとりの友人・藤波(平川真司)とその後輩2人(松本雄介と平川直大)。管理人の沙耶香(YOKO)と2人のヒロイン、由江(中谷千絵)と麻美(村尾有子)。彼らは全員、決して不幸ではないのだが、どこか孤独なものを背負って生きている人物として描かれる。当然、説明するから芝居が長くなるわけで、夏季を中心にドラマは進行していくのだが、出口がひとつだけのアパートの部屋の中で、空間にスポットライトを当てることはなく、全員の人間性なり人生を語るのは容易なことではない。それを敢然とやった森角は立派だが、ひとりひとりの芝居の演出に熱が入っているせいか、あまりにもドラマが多くて“住まいの引っ越し”には不自然過ぎた。
森角は「グランド・ホテル形式」を目指したそうだ。語源の映画『グランド・ホテル』('32米)はヴィッキ・バウムの小説を戯曲化したものを映画にしたものだが、ホテルだからこそ多くの部屋があり人生がある。当然ドアの数も多い。ひっきりなしの出入りは不自然ではないのだ。案外、森角は小劇場シアターグリーンのステージで実験的なことをやったのではないかな。ピンク映画やオリジナルビデオの助監督をしている彼なら、舞台に移ってもいろんなスタイルに挑戦するのが当然かもしれない。でもこの芝居は、もっと空間の広いステージでアパートの外にある引っ越し屋の車内のドラマも同時進行させないと難しい。あと、劇中で時間にこだわるシーンがやたらにあったから、時計の時間と芝居をシンクロさせたらどうかと嫌みな考えも浮かんだ。“舞台が部屋の中だけだからできるのでは?”と上演中ずっと考えた。成立できる芝居だ。もし森角がそれをやったら、点数は上がったかもね。
この『ロンリーマイルーム』はいい演技を見せる役者が多かった。渡邊元嗣監督のゲイ・ムービー『もっこりSEXYBOYS』に主演していた今野元志は、まるで人が変わったように力強い芝居を見せる。別人かと思った。声量もあるから大劇場でも勤まる役者だ。これが彼の本領だったのだな。他はラテン系なマスクが映画的な平川真司と、自己表現がぶきっちょなズレたヒロインを演じる中谷千絵が印象に残った。総じて役者の動きが早く、前半が特にいい。この動きを映画に持っていくと森角の演出はどうなるのかな。彼はこれからも演劇中心らしいが、映画の助監督がかなりある。どっちに行くのかな? 両方に行けばヴィスコンティやベルイマンということになるが…。

『ロンリーマイルーム』に出演の今野元志 |
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さて、本番です。と言っても新作は観ていない。旧作だけだ。BOX東中野で『STACY』というゾンビ映画がレイトショー公開されたが、その関連企画で監督の友松直之の過去の監督、脚本、プロデュース作品の特集が毎週オールナイトで上映され、一晩だけ自分も観に行った。それがピンク映画だった(残念ながらすべてビデオ上映であり、フィルム至上主義者にはじくじたるものがあるけど、現場で確認した以上、もう観念した)。
舞台では友松監督と『STACY』出演の田中要次、友松がプロデュースを担当した『痴漢タクシー エクスタシードライバー』の監督・新里猛作と出演の奈賀毬子の4人のトークショーがあり、上映は全部で5作品。しかし、どこか閑散とした入りのせいもあるが(ビデオ上映で2500円は高いと思う。不入りは納得した)、休憩ごとに監督とお話をしたのだった。
ということで、今月は5作品の中から『痴漢タクシー エクスタシードライバー』と、友松の監督デビュー作『バラードに抱かれて』を取り上げる。
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