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ベテラン野上正義が好演! ただ、沢木まゆみの三十路妻は…
『和服熟女 三十路のさかり』
ピンク映画は観客のターゲットがおじさんたちだから、題名はほとんど漢字である。“和服”とか“三十路(みそじ)”といった単語などは定番の見本。21世紀の現代で、日常的に和服(着物とは書かない)を着るヒロインなんて、映画獣には極道の姐さんかクラブのマダムくらいしか思いつかないのだが、ピンク映画では貞淑で古風な奥様が今も登場する。時代錯誤に思えても、形だけでも和服の美女があえぐ姿は、やはりドキドキするものだ。本作の和服のヒロインは、佐々木麻由子と並んで今年もっとも進境著しい沢木まゆみ(『濡れる美人妻 ハメられた女』)である。
高名な老作家(野上正義)と若い妻(沢木まゆみ)の閑静な邸宅に、妻と同じ大学の先輩であった雑誌編集者(なかみつせいじ)が現れ、夫婦の間に波紋を投じるストーリー。
エクセスは日活系の会社だけあって、劇中に登場する作家夫婦の邸宅には豪奢な風情のする家を使用している(誰から借りたのだろう)。映画のタッチに文学的な情感を出そうと監督はかなり気を配っていて、作家に扮する野上もベテランらしい技量を見せて画面にゆとりを持たせているから、雰囲気の点では成功していると思う。しかし、三十路の和服屋をやらされる沢木はちょっと可哀相だ。若すぎるし、着物を着こなすには無理がある。彼女のうなじを見て、なかみつが欲情を感じるシーンがあったが、見ているこちらはそそらない。彼女が若いからダメというのではない。彼女がこの役をマスターするには時間が不足しているのだ。
かつて、ローレン・バコールが『脱出』で45歳のハンフリー・ボガートの相手役でデビューしたとき、彼女はまだ20歳だったが、画面での2人の年齢差はほとんど感じられなかった。撮影に入るまでの準備中(ハリウッドでは撮影に入るまでの準備期間がやたらに長い)にバコールは、大人の女を演じるための教育と矯正を受けたからこそ、一介の小娘でありながら世の大人の観客を魅了できたのだ。その点では沢木は気の毒である。
先輩を演じるなかみつは逆に老けすぎて色気にも欠ける。彼を見ているとピンク の男優は不足しているなあと毎度感じさせるのだ(単に冴えない男ならピッタシだし、彼の持ち役でもあるが、この映画の編集者役はもっと色男にやってほしいよ)。反対に老作家を演じる野上はハンサムで、豪邸の主には打ってつけだ。この人、若いときから老けメイクが多かったが、メイクが不要の今になって真価が発揮されてきたようだ。『百合祭』でもアパートの主人役を味のある老いぼれぶりで好演していたが、役をちゃんと理解してうまい演技を見せるいい俳優になった。この映画で唯一、雰囲気負けしていないのだからさすがだ。
さて、映画の方は強引に1時間で終わらせたようで、食いたりない。妻の不貞を怒った作家が、愛人の目の前で仕置きに掛けるシーンが期待したほどエロくないからだ。やはり時間が足りないのかな? 別件で取材した野上が言っていた。「昔はロケが終わって金が余っていると、“もう一泊して帰ろうか!”とやってたもんだけど、今は助監督が、“もうすぐ終電でーす。急いで帰って下さーい!”だからね。朝まで徹夜で撮影しても、“野上さん、1日でしたよね”とか言って、超過分なんかくれないんだから。ええ、私等は日給ですよ」
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『和服熟女 三十路のさかり』
監督・脚本:工藤雅典 脚本:橘満八
出演:沢木まゆみ/葉月螢/佐々木基子/なかみつせいじ/野上正義/竹本泰史
2001年日本
提供:Xces Film |
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つまり、時間が足りないのではなく、時間がないのだ。役作りに没頭するなんて、できやしないのだ。
ドラマは、沢木が夫と愛人の両方に呆れて『第三の男』のアリダ・ヴァリのように男を無視して去るラストで終わるが、和服だと家に舞い戻るようにしか見えないので、洋服で去ってほしかったな。
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