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加藤久徳
text by Hisanori Kato |
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第5回
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『未来H日記 いっぱいしようよ』/
『僕は恋に夢中』 |
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わずか数日で1時間の作品を作りあげる
ピンクの世界のプロとはそういうものだ

『空の穴』
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なんともストレスの溜まる仕事だ。本当に気が重い。このコーナーを始めてから、これはと思う作品にめぐり逢っていない。いや、逢っているのかもしれないのだが、気づくだけの土壌に立っていないのかもしれない。その作品を見るに相応しいスクリーンに接していないからだろう。
先月、『ポリス』を見た劇場の状況に対して激怒したことを書いた。そのときに文面には、本当は劇場名を書いていたが、編集部にストップを食らったんだよな。でも、ここの方針だから仕方ない。『ポリス』は、もしも正常な感覚で鑑賞できていたら、別な反応を受けていたかもしれない。今岡信治の『濡れる美人妻ハメられた女』も同様だ。劇場の映写効果や音響や場内の雰囲気があまりにも“鑑賞に不適当”なので、自分が書いたあの文はすべて間違いかもしれない。いや、本当はそうあってほしいのだ。わずか数日で1本の劇映画を製作するという作業は、尋常なことではない。学生やシロウト作家が何か月も何年もかけて自分の思うとおりに作り上げることとは次元が違う。会社の金を使って、決まった長さの中に封じ込めなければならない。作り手にどんな思考や思想、情念があろうと、1時間の尺の中に入れることを義務づけられる。責任も絡む。ピンクの世界のプロとはそんなもんだ。
このコーナーを読んでいる人で、成人映画というものを見たことのない方もいるのではと思うが、書いている自分は、ピンク映画の現実を知らないわけではない。それなりに認識している。もっとフィルム・メーカーたちの気持ちを汲んで書くのが本当かもしれないが、それでは探検にならない。しかし、早くも探検に嫌気がさしている。今のままでは探検の意味はすでになくなっている。探検するより、気楽にピンク映画を見てみたい。いい音、いい画面、いい観客と共に、ピンク映画を映画の1ジャンルとして普通に見てみたい。フィルム・メーカーが一生懸命に作った作品と真剣に接してみたい。オカズにしたい人がいるならAVでも借りてきてくれ。“AVをバカにしている”なんて言っている人間なんかどうでもいい。さっさと消えちまえ。用はない。
ああ、亀有名画座の閉館が、かえすがえすも無念である。どこかピンク映画を定期的に上映してくれる良い劇場はないものだろうか?
おっと、また愚痴が出ちまった。ここの最後くらいは楽に行こう。では、ピンク映画に関わりあることを2点ほど…。
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ピンク専門誌「P・G」主催による2000年度のピンク大賞授賞式で女優賞に輝いた時任歩
(写真左はプレゼンターの池島ゆたか監督) |
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今もっとも活躍が注目の新進女優、時任歩が一般映画に出演しているのを見た。帯広出身の新人監督、熊切和嘉がぴあのスカラシップで製作した『空の穴』がそれ。主人公は北野武監督の『BROTHER』でも好演していた寺島進。時任は、古ぼけた8ミリフィルムの中に現れる寺島の若き日の母親役で姿を見せ、ちゃんとオール・ヌードを披露する。チョイ役とはいえ、主人公の人間形成に重要な影響を与える存在としての役柄だから、悪いものではない。熊切監督に尋ねたら、彼女の出番は2日間のみ(それでもピンク映画より練って撮られているわけだ)で、とてもいい女優さんでしたと言っていた。時任は近い将来、バケるのではと予感している女優だ。先日のピンク専門誌「P・G」主催によるピンク大賞授賞式でも彼女は少々バラエティ・ショー感覚が強かったが、演技力とクソ度胸(快楽亭ブラック師匠の芸術賞受賞パーティでの寸劇の彼女を見てのことだが)の両方がある人。先物買いのつもりで、彼女を知らない人はこの『空の穴』を見てツバでもつけておいてほしい。ピンクではないから劇場は大丈夫だよ。第一、何かのテレビ番組の影響で、大食いのデブにならないとも限らないから、早いうちに堪能してほしい(余計な心配か)。
もう一つは、ゲイ映画『もっこりSEXYBOYS』(8/4公開)の主役の一人である森田真光の舞台を見に行った。場所は高円寺にある小演劇場の明石スタジオ。「演劇集団・戦力外通告」主催の『芸人セレナーデ』(演出・脚色/山口伸明)という芝居で、舞台監督を『もっこりSEXYBOYS』の助監督だった森角威之(佐藤幹雄のそっくりさん)が担当していた。
新人のお笑い芸人たちのテレビ出演オーディションを巡るハイテンションの群像コメディだ。ここでの森田は映画と違って“濃い”。筋肉質の肉体をフルに使い、舞台上でムキムキのアクションを見せる(明らかにゲイの役だ)。尻剥き出しのTバック姿で縦横無尽に駆け回る。えげつないなと思いつつ、彼の役者根性には感心した。連れの女友だちは森田以下、“男らしさ漂う”プロ意識の凄さに圧倒されたらしい。ピンク映画(ゲイ映画が多いのだが)に舞台俳優がよく出るのは、こんな小演劇空間が即戦力に向いているからなのだろうか。実際、この舞台にはピンクのゲイ映画に過去出演した若い役者が他に2人いた(みんな若い人ばかりだが)。村井智丸が2回、浅井ヒロシが1回出演したことがあると聞いた。ゲイ人根性を前面に掲げる森田の派手さに隠れがちの2人だったが、映画に出るだけのムードは確かにあった。
この舞台では、ラストで役者不足を補う形で出演した森角(なんと「僕を男にして下さい!」とホモネタの台詞を言う役だった)を含め、ピンク映画の関係者が4人もいた。知らず知らずのうちに探検をやっていたらしい。
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