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第1回プロローグ

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女優のいい面を引き出して見せる
ピンク界の“マキノ正博”の職人技


『人妻社長秘書 バイブで濡れる』


© 新東宝映画株式会社
 
 
 ピンク映画はいい意味で見れば戦前の活気みなぎる黄金時代のノリを思わせる製作の仕方をしている。スターさんの体が3日空いているから、急いでシナリオを書いて、来週のお盆興行の穴を埋めるために徹夜で撮影する!これに近い。渡邊監督の本作は正にそれ。急造品で撮影は3日(これはピンク映画全般に言えることだから、日常的には通常である)で完了。しかし、急造であるから、作品のコンセプトは監督の腹のうちで決まる。本人の力量が映画全体を左右するのである。そういう意味でピンク映画は作家の映画だ。誰が作っても同じものになるハリウッド映画とは次元が違う。

 リストラで首になった夫(ささきまこと)と家計を守るために社長秘書になって会社に出かける妻(時任歩)が主人公。夜の営みがうまくいかなくなった2人の前に週刊ヤングジャンプの漫画『Y氏の隣人』に出てくるザビエルの如く天使(林由美香=チャイナ・ドレスがなかなか良い)が現れ、セックスの手解きをして夫婦円満をもたらすというお話で、ジャンル的には“ファンタジー・ラヴ・コメディ”の範ちゅうに入る。しかし、約1時間の上映中、サービス精神旺盛な渡邊監督は全編に“からみ”を見せる(脚本は波路遥)。その最も顕著なのは時任が見せる人妻の妄想で、タイトルにあるバイブ(見るも鮮やかな青色の巨根で、中に真珠が詰まったすぐれもの)を使って人目を気にしつつオナニーに耽る。彼女の恥技はかなり面白い。昔の日活ロマンポルノなら、満たされぬ女の性のはけぐちとしてバイブが登場すると、カメラは舐めるように女優の肌と表情を追ったものだが、渡邊監督にかかるとバイブは完全に大人のためのオモチャであり、と言うより生活の必需品となる。映画に深い意味を持たせるという大層な理屈こそないが、人妻には元々これが必要なのだという説得力は確かに出ている。それをシリアス系の時任が扱うから面白いのだ。

 時任は渡邊組の常連だが、意外とシリアス系女優のイメージが強い。愛嬌に欠けるところもあった。台湾の二流監督が撮ったハード・ポルノ『I.K.U.』の時任はイメージ的には合っていたが、女優を粗雑に扱う監督のために出番はブツ切りにされ、哀れな結果を生んだ。しかし、本作の彼女は役柄上、あられもない姿で恥態を要求されてはいても、細かいところで女優らしさを見せている。オフィスでバイブに狂った彼女がイク寸前で、無情にも必需品が機能停止。足腰がふらつくまま給湯室の前に来ると、中では男女の同僚(水原かなえと熊谷孝文)が最中に励んでいる。それを目撃するときの時任の表情がいい。ほてった顔色には先ほどの状況が克明に出ていて、たとえ前のシーンが映像として登場しなかったとしても、見る側にはヴィジュアルが脳裏に浮かぶだろう。このカットは撮影者の上手さにもよると思う。

 急造だが、筋立てはしっかりしている。夫婦の心の中に悪魔のように踏み込んで来る天使役の林由美香もいい。あっけらかんとしたところは本人の地のままだが、妻にはバイブを渡
 
 
『人妻社長秘書 バイブで濡れる』
監督:渡邊元嗣
脚本:波路遥
出演:時任歩/ささきまこと/十日市秀悦/林由美香/水原かなえ/熊谷孝文
2001年日本
1時間3分
配給:新東宝
公開中
し、夫には自分の体でもってケアを施すご都合主義は林のキャラには合っている。往年の由 利徹のノリでスケベ社長を演じる十日市秀悦は出色の出来。今時こんな堂々たるセクハラ社長がいるはずもないが、怪しげな東北弁を駆使した熱演は十分に買える。

 職人技が光った愉快な作品。女優のいい面を引き出すあたりは、ピンク界のマキノ正博かな。






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