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第1回プロローグ
第2回 『僕はAVをバカになどしていない。“スクリーン主義者”なだけだ!』
第3回 『ピンク映画のパイオニアが手がけたTV動物映画と大阪で遭遇』
第4回 『探検隊なのだから、たまには試写室を抜けて映画館へ』
第5回 『わずか数日で1時間の作品を作りあげるピンクの世界のプロとはそういうものだ』
第6回 『メイキングビデオや一般作など従来のフィールド外で活躍するピンク監督』
第7回 『数々のピンク映画で助監督を務める新進舞台演出家のお手並みを拝見』
第8回 『山形の映画祭で巡りあえた、ピンク映画の始祖的作品2本』
第9回 『“ピンク界のデビット・リンチ”によるゲイ・ムービー』
第10回 『ピンク映画専門誌「P・G」が季刊に嗚呼、月刊の紙媒体が消えてしまう』
第11回 『ピンクとは違う分野へ進出し精進する俳優たち』
第12回 『ただでさえ小屋数の少ない成人映画専門館がまたひとつ閉館してしまう。哀しい話だ。』

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加藤久徳
text by Hisanori Kato

 第13回 
『黒幕』/
『イヴの衝撃 不貞妻の疼き』/
『ゴジラ対鞍馬天狗』

どこにこれだけのピンク映画ファンがいたのか?
と思えるほど、今年のピンク大賞は盛況だった


 4月20日、「P・G」主催のピンク大賞の授賞式に出かけた。会場となった池袋・新文芸坐は、“どこにこれだけのピンク映画ファンがいたのか?”と思えるほど人が溢れかえっていた。

 亀有名画座の閉館以来、ピンク大賞の授賞式は新宿ロフトに2回ほど移っていたが、昨年からリニューアルなった文芸坐にスイッチした。そのときは器の小さかったロフトの余波を受けてか、混雑はしていなかったが、今年は241人も観客が集まったとか。これでしばらくは定着すると思う。心からそう願いたい。

 プレゼンターを務める池島ゆたか監督が「本当にいい劇場だ。音も映りもいいし…」と、去年と同じことを言っていた。それは2年越しで聞かされているこちらもご同様だ。このコラムが始まったときから僕はしつこく書いているけど、デジタル時代の今日、映りと音の悪い劇場は劇場にあらず。このままでは間違いなくDVDに負けるぜ。

 新文芸坐は、3月に『スパイ・ゲーム』を見に出かけたとき、ロングショットが多数を占めるこの映画で、よくこれだけフォーカスを合わせられるものだと感心させられた。旧文芸坐(特に、地下の2の場合)のときの映写は、ピントが合わない方が普通の、粗悪な劇場だった。今の新文芸坐は映りも音も格段に良くなって、新宿・渋谷の一部封切り館より、映りの面ではランクが上だ。井筒和幸はテレビで全国チェーン映画の精神論ばかりブッ叩いて喜んでいるけど、僕は作品よりも、映写を疎かにしている劇場のほうをブッ叩きたい。映写をしっかりしてくれないと、DVDはおろか、劇場そのものがDLPやハイビジョン上映にとって替わられる。確実に映写技師は職と職場を失う。フィルムと違い、DLPやハイビジョンのシステムは画質はおろか、絶対にピントはボケないからね。見る側にとってこれ以上の保証はないし、安心して映像を堪能させてくれるものはない。

 時々、“ニュープリントを扱いながらも、劇場の映写が悪いのは、やがて現実のものとなる全館DLP化推進の既成事実作りのためのマインド・コントロールでは?”と疑っている。“ピンボケを防止し、35ミリ映写機では装填不能の古いプリントも、新型プロジェクターならトラブルは皆無である!”と、絶対的な証拠を見る側に植えつけているようで、気が気じゃない。


 ピンク映画を劇場へ見に行くたびに、暗澹たる気分にさせられる。池島監督は舞台で、「映りや音の悪さは、劇場の人にちょっと苦情を言ってくれれば何とかなるかも」なんて遠慮がてらに言っていたけど、最近改装したある劇場でおじちゃん、おばちゃんたちがたむろっている姿を見たら、そんな気持ちは溶けて消えちまった。言うだけ無駄。自分で何億か金出して、劇場を買い取って運営する根性を持たないかぎり、改善は不可能だな(つまり、夢か幻だ)。だからピンボケでも、セリフが聞き取れなくても、何も言わないのだ。

 盛況なピンク大賞の授賞式での池島さんのコメントは、真面目に劇場で見ている僕には空しかった。コンディションの良い劇場でリアル・タイムのピンク映画鑑賞をしたい。東映化学の試写室で関係者だけが、その映画の本当に言わんとするものを見ているのでは、劇場で見るピンク映画ファンが気の毒だし、フェアじゃない。新文芸坐がメイン館なら、これ以上の理想はないのだが、まぁ、夢だな。亀有名画座が懐かしい…。あぁ、また繰り返しちまった。

 さて、今回はちょっと目先を変えてみる。ピンク大賞で上映された3本の作品はベストテン映画は内容的に完成度の高いものが揃っていて、1本くらいは取り上げてみてもいいのだが、やめておこう。今岡信治の脚本が素晴らしいサトウトシキ作品『団地妻 隣りのあえぎ』(ベストテン1位)。ジェームズ・ケインの某小説みたいだが、秀麗な映像美と主演者3人の好演が抜群の『喪服の女 崩れる』(2位)。世紀の愚作であるデミ・ムーア主演『薔薇の眠り』(2000)の100%パクリでありながら、オリジナルを遙かに超える演出の妙味を発揮した荒木太郎監督の『義姉さんの濡れた太もも』(4位)の卓抜した面白さ…。

 3本とも良かった。ただし、それは新文芸坐のスクリーンで見たからだ。音が明瞭で、フォーカスもピシッと合っていたからね。封切りで見ていたら『喪服の女 崩れる』なんかどうなっていたことやら…。

 と言うことで今月は、ピンク大賞授賞式で先年、急逝した小林悟監督の追悼企画として特別上映された一般映画『黒幕』('66/松竹)。そして、「P・G」では絶対に取り上げられることはないであろう町田政則出演の『イヴの衝撃 不貞妻の疼き』と、一度しかピンク映画に出演したことのない坂本頼光の監督作品『ゴジラ対鞍馬天狗』の3本立て。




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