東京
神奈川
千葉
埼玉

Back Number
第1回プロローグ
第2回 『僕はAVをバカになどしていない。“スクリーン主義者”なだけだ!』
第3回 『ピンク映画のパイオニアが手がけたTV動物映画と大阪で遭遇』
第4回 『探検隊なのだから、たまには試写室を抜けて映画館へ』
第5回 『わずか数日で1時間の作品を作りあげるピンクの世界のプロとはそういうものだ』
第6回 『メイキングビデオや一般作など従来のフィールド外で活躍するピンク監督』
第7回 『数々のピンク映画で助監督を務める新進舞台演出家のお手並みを拝見』
第8回 『山形の映画祭で巡りあえた、ピンク映画の始祖的作品2本』
第9回 『“ピンク界のデビット・リンチ”によるゲイ・ムービー』
第10回 『ピンク映画専門誌「P・G」が季刊に嗚呼、月刊の紙媒体が消えてしまう』
第11回 『ピンクとは違う分野へ進出し精進する俳優たち』

▽最新の『ピンク映画探検隊』へ






加藤久徳
text by Hisanori Kato

 第12回 
『AM2:00〜これは仕事〜』/
『宿 YADO 月夜野村山姥伝説』

ただでさえ小屋数の少ない成人映画専門館が
またひとつ閉館してしまう。哀しい話だ。


 これはボヤキと言うより哀しい話だ。都心の中にある数少ない日本映画専門の名画座「新宿昭和館」が4月いっぱいをもって閉館してしまう。2月の半ばに自分が出入りしている新聞社で編集者に聞いたときは、“やっぱり!”と思って驚きはしなかったが、やはり心中は穏やかじゃない。一昨年に友人から、東映、大映、日活の旧作がニュー・プリントで上映されているという情報を聞かされてからはひんぱんに出入りを始めていた矢先だったから、タイミングが悪いよ。

 JR新宿駅南口の下、3丁目にあるうらぶれた古い建物の中にある2階立ての小汚い映画館。土曜日ともなると馬券買いのオジサンたちが外れた憂さをはらしに来る物騒な小屋という印象が強く、大昔、若山富三郎主演『極道』('68)を見るために初めて入ったとき、満員の場内に蔓延する、酒気、紫煙、すえた体臭が醸し出す独特の人いきれのオーラに脳髄が歪んだものだ。“二度と行くまい!”と決意したその日から、どんなに興味深い作品が上映されようと、目に留めることはなかった。平然と見に行く自分より後輩の邦画ファンたちに向かって「いいなあ。僕の見てない映画をたくさん見られて」と皮肉混じりにつぶやくのが口癖になったのは、元をただせば、昭和館に絶対出かけないという方針から出たセリフだ。


 '80年代後半から'90年代前半にかけて東京では、三軒茶屋のスタジオams、大井武蔵野館、築地にあったシネ・バラック、浅草東宝のオールナイトの4館を柱に、旧・池袋文芸坐も含めて(銀座並木座はこの枠に入らない)、日本映画全盛期の“名作と呼ばれない日本映画クラシック”が、マニアックな見地に立った特集上映で、連日どこかで組まれていた。僕らはそれらを、必死こいて見て回ったものだ。“スクリーンで映画を語りたい! 東京にいてビデオなんかで映画を見るくらいなら足を洗おうぜ!!”とばかりにね。それらの銀幕たちは今はない。新宿昭和館はその頃も、通常のアクションとお色気主体の番組体制で我が道を行っていたのだけど、僕だけは通わなかったのだな…。

 ぼやいても遅い。なにしろ、今頃になって昭和館に出かけるようになったのは、やはり友人が言った「最近は客が減って、まともに見やすくなったよ」の一言のせいだったから不謹慎だ。ある日、劇場の人に閉館理由を尋ねると「建物の老朽化が進んで、いつ崩れてくるか心配で」と言っていた。このセリフは、文芸坐の三浦社長が文芸坐を閉めたときの理由とまったく同じ。そして昭和館は、文芸坐と同じく近代的なビルに生まれ変わるのだ。

 当然のことながら、地階にあるエクセス系ピンク映画館「昭和館地下」も同時に閉館する。ただでさえ小屋の少ない成人映画専門館が煽りを食って姿を消すのだから、探検隊長はこのほうにぼやかなければいけないのだけどね。この地下には一度しか入場したことはないけど、階段状の見やすい劇場だったと思う。最期のときに1回出かけるかもしれない。

 おっと、もう一つ。昭和館閉館後の5月から、その昭和館の番組を引き継ぐ劇場がある。なんと、中野にある中野武蔵野ホールだ。ヤクザ映画主体で番組を組むと劇場マンが語っていた。しかし、時代劇は企画に入っていないとのこと。ヤクザ映画系ファンには吉報だが、時代劇好きには、あまりうれしくないニュースだろうね。


 ところで中野武蔵野ホールはインディ系ムービーの封切り館だったのだが、もう封切り館ではなくなる。とすると、“P−1グランプリ”はどうなるのだ。3月にはグランド・チャンピオン・カーニバルが開催されていたが(夜型で深夜でないと仕事をしない僕は、例によって出かけなかった)、良い環境でのピンク映画鑑賞がいよいよ遠のくことになるわけだ。どうやらピンク映画を見られる場所が一挙に2つ減ると見たほうが正しいらしい。アップリンク・シアターがある?

 ウ〜ン…。

 さて、今月のピンク映画は!

 ちょっと変則だ。ピンク映画ではない。一つは渡邉元嗣監督作品の助監督を務めた森角威之の『AM2:00〜これは仕事〜』だが、映画ではなく、これは演劇だ。劇団・天然工房を主宰する彼の第4回公演であり、探検隊では昨年、第3回公演『ロンリーマイルーム』を取り上げたけど、将来はピンク映画を撮ってもらいたいという期待を込めて、レビューの欄に入れる。

 もう1本は、先頃、ピンク映画から離れて一般作品へ移行した佐々木麻由子主演の『宿 YADO 月夜野村山姥伝説』('98)。これもピンクにあらず一般映画だが、このコラムに取り上げる意味が、実はある!




「スロウトレイン」に掲載の記事・写真・カット等の無断転載を禁じます。© Works m bros.