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第1回プロローグ
第2回 『僕はAVをバカになどしていない。“スクリーン主義者”なだけだ!』
第3回 『ピンク映画のパイオニアが手がけたTV動物映画と大阪で遭遇』
第4回 『探検隊なのだから、たまには試写室を抜けて映画館へ』
第5回 『わずか数日で1時間の作品を作りあげるピンクの世界のプロとはそういうものだ』
第6回 『メイキングビデオや一般作など従来のフィールド外で活躍するピンク監督』
第7回 『数々のピンク映画で助監督を務める新進舞台演出家のお手並みを拝見』
第8回 『山形の映画祭で巡りあえた、ピンク映画の始祖的作品2本』
第9回 『“ピンク界のデビット・リンチ”によるゲイ・ムービー』

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(前頁からの続き→)

上野俊哉監督&小林政広脚本による
“したがる兄嫁”シリーズ最新作


『新・したがる兄嫁 ふしだらな関係』

 前3作『したがる兄嫁』とはなんの関係もないが、いわゆる“バカ兄弟”シリーズの第4弾である。上野俊哉監督によるこのシリーズは僕の大のお気に入り。それらの脚本を書いている小林政広のことをこのコラムで否定的に書いたことがあるが、このシリーズに関しては別だ。上野監督の演出が好きで、一種のシチュエーション・コメディとして撮られたこのシリーズは、登場人物に愛嬌があるのでとても楽しめる。映画そのものが可愛らしいので好きなのだ。昨年の“P−1GRAND−PRIX2001”にも出品された『どすけべ姉ちゃん』の脚本のことを小林は「ピンク映画の最も悪い部分が出ている」と言って、ピンクの脚本執筆を断ってしまったが、これがダメならピンク映画の脚本は全部ダメだろうと考えるけどね…。そんな小林がカムバックして書いたらしいのが本作(なぜまた、戻った?)。上野監督は小林脚本でなければ映画が撮れないらしい。彼もまた『どすけべ姉ちゃん』以来の新作なのだ。

 エピソード1に当たる『どすけべ姉ちゃん』は別にして、1、2はどれも田舎を舞台にしたもので、その牧歌的な雰囲気を都会に再現するためか、静かな下町に舞台を変えたようだ(メイン舞台になる神社の境内は湯島天神らしい)。弟の真二に扮する佐藤幹雄が登場第一声で「相変わらずシケた町だな!」と吐き捨てるが、学業の神様を祀る湯島天神がシケた町にあるのでは神様も終わりだなと、後で苦笑いしちまった。

 冗談はさておき、奥行きのある田舎と違い(シケた町であろうと、今どき人口過剰な東京中心部で牧歌的な雰囲気を出すのは無理な話)、第2作にあった夜の山道でのサスペンスは望めないなと覚悟したが、結果としてその通りになった。境内の石段から転落した兄の真一(江端英久)は頭を強打したショックで完全な記憶喪失に陥る。そして、その原因となる雑誌記者の美女・クメ子(佐々木ユメカ)と別人生を歩むことになるが、実はクメ子のマンションのベランダから真一と彼の妻・明子(宮川ひろみ)の住む一軒家が丸見えという地形から、いつ夫婦がバッタリ再会するのかが、ちょっとおかしいサスペンスを呼ぶはずだった。しかし、見たかぎりにおいては、それがなかったと思う。

 笑いも足りない。売れない舞台役者の兄夫婦の家に、くだらない仕事にウンザリして職場放棄をしてきた売れっこ(らしい)俳優の弟が、自分はスターだからと理不尽な要求を振りかざして勝手に居候を決め込む。ここで笑えれば言うことはなにのだが、兄嫁と弟のその後の関係にイヤラシイ期待感をもつ観客の僕には、本来あるべきペーソスを感じ取れなかった。


(C)新東宝映画
 さて僕が残念だったのは2点。“P−1ガール”上がりという宮川ひろみにエロさと演技力を感じなかったのが1点。演技的に調子が出てきたときには撮影が終わったのでは?という感じで少し気の毒な気もするが、色気をまったく感じさせないのは本人のパーソナリティ。ここだけはいまどきの都会の女だった。

 もうひとつは、小林が書く職業上のリアリティ(以前に書いたな)。雑誌記者のクメ子が、自分のマンションの近所で将来を嘱望されるスター俳優・真二を発見し、それをスクープするべく上司に企画を提案するが、そこから先がいけない。物分かりのいい上司が「ふ〜ん、アクターズ・スタジオね。なるほど」と訳知り顔でクメ子のお願いに賛同するが、ゴシップ種になるほど知られた俳優とはこの映画では書かれていない。物分かりのいい上司であるより「本が売れるほど有名かよ、コイツは? 知らねえぞ俺はこんなヤツ。君に売る自信があるのか?」と言わした方が現実感がある。雑誌とか新聞の編集部なんてそんなものだろう。もっといけないのは、その後のクメ子の行動。スクープ記事OKの返事を貰いながら行動に移さず、社の外で手すりを掃除していた真一の妻・明子に声をかけるが、スクープのための準備ではない。ライターというのは、1分1秒たりとも記事なり取材というのを忘れないものだ(と言うより逃れられない)。この映画の雑誌記者は自分が何の仕事をしているのかをまったく忘れている。だからサスペンスが生まれない。都会の雑誌社で働く(あるいはフリー・ライターか)女性が仕事を忘れていたらウソだ! 家に住まわせた記憶喪失の真一にも、自分にかかってくるだろうFAXなりメールなりを代わりに応答させる何らかの作業(情報収集だってある)を、リハビリ代わりにやらせてしまうくらいのドン欲さがなければライターじゃない。 小林政広は、せっかくカムバックしても、今回も職業はおざなりでしか描けなかったのだ(それにしても手抜きすぎる。本当に本人が書いたのかね?)。

 演技者としては江端が一番いい。抜けた弟ばかりを演じていた彼だが、今回は二の線を感じた。
 
『新・したがる兄嫁 ふしだらな関係』
監督:上野俊哉
脚本:小林政広
撮影:小西泰正
助監督:坂本礼
出演:江端英久/佐藤幹雄/宮川ひろみ/佐々木ユメカ/飯島大介/新納敏正
2001年日本
1時間
配給:新東宝映画
 
いい表情を見せるシーンが多く、意外とハンサムな役が似合う役者ではと思わせられた。 上野監督はかつて“役者さえ揃えば、自分はコメディを撮れる自信がある”とほのめかしたことがあるが、僕はそれを今も信じている。江端も佐藤もユメカも、もっといい脚本で共演者に恵まれたら、伸びる役者たちだからだ。仕切り直しで改めて見直したい人たちが揃った映画であった(エキストラで出ている松井哲明も含めて)。

 そうすれば、香港映画『花火降る夏』みたいなラスト・シーンも、もっと気楽に笑えていたはずだ。




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