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第1回プロローグ
第2回 『僕はAVをバカになどしていない。“スクリーン主義者”なだけだ!』
第3回 『ピンク映画のパイオニアが手がけたTV動物映画と大阪で遭遇』
第4回 『探検隊なのだから、たまには試写室を抜けて映画館へ』
第5回 『わずか数日で1時間の作品を作りあげるピンクの世界のプロとはそういうものだ』
第6回 『メイキングビデオや一般作など従来のフィールド外で活躍するピンク監督』
第7回 『数々のピンク映画で助監督を務める新進舞台演出家のお手並みを拝見』
第8回 『山形の映画祭で巡りあえた、ピンク映画の始祖的作品2本』
第9回 『“ピンク界のデビット・リンチ”によるゲイ・ムービー』

▽最新の『ピンク映画探検隊』へ






加藤久徳
text by Hisanori Kato

 第10回 
『新・したがる兄嫁 ふしだらな関係』/
『姉妹OL 抱きしめたい』

ピンク映画専門誌「P・G」が季刊に
嗚呼、月刊の紙媒体が消えてしまう


 読者のみなさん、新年明けましておめでとう。どんな正月を迎えられたことだろうか? こちらは完全な寝正月状態で、どこへも行かなかったな(映画の観始めは7日から。信じた人は少ないが)。ピンク映画も観なかった。もっとも、暮れになってから、人にも勧められるような佳作を観たので、いい新年を迎えられたと思う。田尻裕司監督の新作『姉妹OL 抱きしめたい』がそれだ。このコラムの第1回目から散々ぼやいていた僕だが、この映画は認める。昨年度公開作品の第1位に推す。


『OLの愛汁 ラブジュース』
©新東宝映画
 ジェームズ・キャメロンの大ヒット作『タイタニック』('97)と田尻裕司の代表作『OLの愛汁 ラブジュース』を比べてどちらが好きかと聞かれたら、正直に『OLの愛汁 ラブジュース』と答える。身分違いの若い男女の恋物語を壮大なSFXを駆使して作り上げたビッグ・バジェット作品は優れた作品だが、自分には都会の片隅で切々と生きるひとりのOLの深層心理を追ったロー・バジェット作品『OLの愛汁 ラブジュース』の方が後味がよくて好きだ。いいや、もっと本音を言えば、“愛の不毛”3部作で'60年代を席捲した一連のアントニオーニ映画よりよほど面白い(昨年、フィルムセンターでミケランジェロ・アントニオーニの処女作『ある愛の記録』('50)を観たが、アントニオーニはその後、デビュー作を越えられなかったのではないかと確信を持てた)と思っている。『OLの愛汁 ラブジュース』は僕にとっての『太陽はひとりぼっち』('62)である。都会に生きる若い男女の愛の不毛を描いた点で共通するからだ。30年以上の年月の差こそあれ、画面に流れる冷たい空気は肌合いが一緒だ。しかし、今の眼では、男女のエロスへの情熱が加味された分、アントニオーニには悪いが田尻の方が映画として面白いのだ。おっと、田尻監督の新作『姉妹OL 抱きしめたい』については、この後に回しておく。

 ピンク映画の専門誌「P・G」が、今年から季刊になった。その結果、紙媒体としての月刊の情報が消えてしまう。編集長の林田氏は、今後はサイトを読んで情報を得て下さいと言っていたが、パソコンのないアナログな人には絶縁状を貰ったような感じで何とも手厳しい。手に持って広げられるから温かみがあるのだけど、これも時代の要求か。だからスロウトレインがあるのだな(笑) とにかく、今月最大のボヤキに変わりはない。


ピンク映画専門誌「P・G」12月号
 月刊最後になったのは12月号(No.90)。“P−1 GRAND−PRIX2001”の総括や昨年11月に急逝したピンクの名匠・小林悟監督の追悼記事、そして「特集 MOVING PINK FILMS」と題して、全国に点在する自主上映・イベントの各団体の活動状況の紹介が載っている。資料的な価値もあり、非常に盛りだくさんな内容だと思う。実際読んでいて面白い。ピンク界一の知性派でありながら思考的にはなぜか武闘派である榎本敏郎監督のP−1の「総括…?」(P45)におけるコメントは、どこか無機質で取り付くしまのない暴力的な彼の映画をオーバーラップさせているようで興味深い。あるいは、たとえ劇場に行かずとも、その予告編を観たことのある人なら、43ページにある中山のんによる漫画「男、女池充 仁王立ち!」を見て心動かされないはずはないだろう。知る人ぞ知るのピンク映画界だけど、この12月号は生々しい面白さに充ちていた。

 でも一番僕が気に入ったのは林田編集長の連載ページ「IN CHAOS」。ここは編集長の素直な思いが込められているいいコラムだ。最終回は、お通夜にも出席した編集長の小林悟監督に対する複雑な思い出がつづられている。記念すべきピンク映画監督第1号でありながら、40年間も“ただのピンク映画”ばかりを撮っていたために、「P・G」関係者には冷遇されてきた小林監督とはどんな人物だったのかを、彼なりの分析でまとめている。普通、この手の追悼文は故人に所縁のある人や尊敬の念をもつ人が書くものだが、「P・G」ではそれができない(55ページには現代映像研究会の松島氏が追悼文を寄せているが、かなり苦慮している)。結果として編集長の責任となる。最終号に合わせるように他界した小林監督の最期のしっぺ返しを受けとめるように、単に人物像を描くのではなく、あくまでも、林田義行氏の個人的な主観に乗っ取った研究論文の趣があるから、だからこそいいのだ。
 90号もの月刊出版。本当にお疲れ様でした。

 さて今月は、上野俊哉監督の新作『新・したがる兄嫁 ふしだらな関係』と田尻裕司監督の『姉妹OL 抱きしめたい』の2作。実は小林悟監督を取りあげようと思って、旧作の薔薇族映画『薔薇の青春』と新作『巫女の美肌』の2作を観たのだが、はっきり言ってここに書くだけの自信がない。故人に対して失礼だが、ちょっと無理なものがある。今年はピンク映画誕生40周年に当たるので、まもなく公開される遺作まで、待ってみることにする。




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