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第1回プロローグ
第2回 『僕はAVをバカになどしていない。“スクリーン主義者”なだけだ!』
第3回 『ピンク映画のパイオニアが手がけたTV動物映画と大阪で遭遇』
第4回 『探検隊なのだから、たまには試写室を抜けて映画館へ』
第5回 『わずか数日で1時間の作品を作りあげるピンクの世界のプロとはそういうものだ』
第6回 『メイキングビデオや一般作など従来のフィールド外で活躍するピンク監督』
第7回 『数々のピンク映画で助監督を務める新進舞台演出家のお手並みを拝見』
第8回 『山形の映画祭で巡りあえた、ピンク映画の始祖的作品2本』
第9回 『“ピンク界のデビット・リンチ”によるゲイ・ムービー』
第10回 『ピンク映画専門誌「P・G」が季刊に嗚呼、月刊の紙媒体が消えてしまう』
第11回 『ピンクとは違う分野へ進出し精進する俳優たち』
第12回 『ただでさえ小屋数の少ない成人映画専門館がまたひとつ閉館してしまう。哀しい話だ。』
第13回 『どこにこれだけのピンク映画ファンがいたのか?と思えるほど、今年のピンク大賞は盛況だった』






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『キミニ惚レテル』

ベテラン美形俳優、樹かずの初監督作は
“泣き”のツボをおさえたラブ・ストーリー



(C)ENKプロモーション
 “樹かず、なかなかやるじゃないか!”と言うのが僕の本音。美形だが、既にベテランの域に達しつつある樹が、とうとう監督業に進出した最初の作品が池島ゆたかプロデュースによる“薔薇族映画”であった。

 樹の薔薇族映画出演は当然ながら数多く、僕もそれなりに見てる。端役だが、『ミステイク』(池島監督作)のウリセン・ボーイ役は印象的だった。若い、身体がいいという以外、あまり美形が登場しない薔薇族映画の中にあって、樹の存在は極めて重要なポストに位置する。この人は、クールにとりすましているだけで何もしなくてもいいような得な俳優さんだ。大根と思ったことはないが、役者バカはどうやら似合わない。二の線だけで充分いいのだ。しかし、それでは年をとったときに報われないことになる。4、5日の撮影だけで終わってしまうピンクの現場なら、自分も監督になれるのではと思いを馳せてもおかしくはない。結果として薔薇族映画というのも、外野としては合点がいくのだ。

 デビュー作の常だが、『キミニ惚レテル』も通常のレベル以上に手間ひまかけて作られていて、その成果がおおいに出て佳作となっている。主人公は歌手志望の青年(千葉尚之)であり、一見、普通の男として描かれている。つまり、ゲイなのだが、彼の目線においては、ゲイを変態としては捉えてはいない。男女のそれと同じく、普通の性癖として描かれる。青年が生活のために行なうゲイ・ビデオのバイトがそれをよく表していて効果的。好きなものはやめられない。だから相手を求める。これがオープンになっているから、気持ちが分かりやすい。とても自然体だ。



 基本的には、かつて意中に秘めていた高校時代の親友に再会し、再び想いに身を焦がす若者の恋愛感情を思い入れたっぷりに描写した青春ラブ・ストーリー。音楽の世界に向かうべく日々努力している彼が、同時期に、音楽界入りのチャンスと親友の白血病発症がぶつかってしまい、苦悩する姿が泣かせる。あとで考えれば、流行りの難病ものかとボヤキたくもなったが、ストーリーも演出もしっかりしているので、それほど気にならない。同じ頃に試写室で見たせいもあるが、何の病気か最後まで明らかにしないくせに、観客に向かって泣けと強要するような同傾向の韓国映画と比べると、泣かせる映画のツボは本作のほうが遥かに心得ている。意外なラストも許せる。

 主演の千葉は的確な役作り(ピンク映画としては珍しくそう感じた)も含めて抜群の好演。千葉に入れ込むオネエのパトロンが出てくるが、彼を相手にしたホモセックス・シーンでの千葉のお尻の動かし方が微妙にいやらしく印象的。ここらへんの演出に樹のキャリアを感じるのだが、千葉の起用はこのお尻のせいではと思うのも外野の本音だ。

 この作品には張り型の必要なし! これも本音。(☆☆☆☆)




(C)ENKプロモーション
『キミニ惚レテル』
監督・出演:樹かず
プロデューサー・出演:池島ゆたか
脚本:五代暁子/岡輝男
音楽・出演:吉永幸一
出演:千葉尚之/神名弘/山名和俊/佐々木基子/平賀勘一/香山貴子/船原かおる
2002年日本
配給:ENKプロモーション





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