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ふたりの男性の出会いから
“シネ・コスチューム”が生まれた
この作品は18世紀、フランス革命直前にフランスを震撼させた狼男「ジェヴォーダンのベート」の伝説をもとにつくられたフィクションで、その中で使われた衣装がパリの中心にあるマルチコンプレックス映画館UGC CINECITEで展示されている、という内容の記事だった。展覧会よりも私はこの男性ふたりに興味津々、早速電話をしてオペラ近くにある彼らの事務所まで会いにいく。ロマン・ルレはDROUOTドゥルーオというフランス版サザビーまたはクリスティーズで鑑定家になる修行をしていたときにPONTETの衣装がオークションにかけられることを知り「もらった遺産をつぎこんで」250着の衣装を手に入れた。その中には『北ホテル』でアルレッティが着た衣装、サシャ・ギトリの作品に登場した衣装や小道具、ジャン・ギャバンが袖を通した衣装などが含まれていた。
もうひとりのディディエ・ジョヴネは映画フリークで、同じ頃に女優アリス・サプリッチ(1916‐1990)の遺品の数々を手に入れたばかりだった。ふたりは偶然というか必然的に知り合い、CINE COSTUM'シネ(映画)・コスチューム(衣装)という非営利団体が誕生したのが1995年3月のこと。設立の裏には、映画の財産のひとつである衣装や小道具を保存し、テーマを決めた展覧会を企画して少しでも多くの人々に見てもらいたい、という願望があった。だから衣装の貸し出しを営利目的にしていたポンテとは違い、手に入れた衣装の貸し出しは一切行わない。展覧会も企画&設置まで自分たちで仕切る。団体を映画界や一般の人々に知ってもらうために設立同年のカンヌ映画祭では海岸で宣伝活動を行った。

ロマン・ルレとディディエ・ジョヴネ。《LE PACTE DES LOUPS》の展覧会場にて
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その甲斐あってジュネ&カロの監督作品でその年カンヌのオープニング作品だった『ロスト・チルドレン』のプロデューサーにジャン=ポール・ゴルチエデザインの衣装を譲り受ける。業界の中で少しずつ名を知られるようになったシネ・コスチュームは、俳優や映画監督&プロデューサー300人以上のメンバーから金銭または衣装や小道具など、物での支援を受けながら活動を続ける。俳優ジュ―ド・ローからは靴下をもらった、アメリカの製作&配給会社FOXからは『タイタニック』でケイト・ウィンスレットがつけていた首飾りを、フランスの人気漫画を原作にした《ASTERIX ET OBELIX CONTRE CESAR》では、女優アリエル・ドンバルとジャン=ピエール・カスタルディの着ていた衣装が寄贈された…。
こうしてシネ・コスチュームのコレクションリストは年々厚みを増していく。映画製作会社の老舗パテ社の衣装(ジョルジュ・メリエスの映画作品のものもあるらしい)を最近買い取って、現在では850本の映画作品に登場した3000着の衣装と6000以上の衣装や小道具に関する原画がパリと近郊の9つの倉庫に保管されている。ところで非営利団体と紹介したが、シネ・コスチュームは国やパリ市からの援助を一切受けていない。衣装の管理だってばかにならないし、一点ものであるスターの衣装をオークションで手に入れるのにもお金がいるだろう(修復には莫大な費用がかかるので、すべての衣装は完全な状態で手に入れるのだそうだ)。パリには空いている事務所が山ほどあるのだから、パリ市はただで場所を提供してもいいじゃないか、と思う。国立映画センターや文化省だってカクテルパーティーの数を少し減らせば月々にいくらか援助金を出せるのではないか…と思う。
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「フランスの役所や美術館は、いつも自分たちの殻にこもって仕事をしている」とロマンは言う。そうそう、これがお役所の面倒くさいところで、しかも個人がこれほど重要なコレクションを持っていることへの妬みもきっとあるに違いない。話を戻すが、ふたりに出会うきっかけになった《LE PACTE DES LOUPS》の展覧会以外にも、ロマンとディディエは展覧会を開いてきた。中でも一番新しいのが昨年末にブルターニュ地方の都市サン=マロで開かれた俳優ジャン・マレに関するもので、ジャン・マレが身に付けた衣装や小道具に限らず、マレ自身の手によるデッサン、陶器などが展示され好評だった。
この展覧会は2年をかけてフランスの地方を巡回する予定だし、今年または来年のカンヌ映画祭でも新しいイベントを考えているし、パリの市内でも大きな催しを企画したい、と意欲とアイデアには事欠かない。ふたりはアメリカでも展覧会を開いたことがある。自分たちの領域を守りたがるフランスの役所とは違い、アメリカには多くの可能性があっていい勉強になった、と口をそろえてふたりは言う。おまけに日本人以上に新しいもの好きのアメリカ人たちは、一度使われたものを保存しようとするふたりの態度に感動し、応援してくれたのだそうだ。次の目標地はアジア。台湾、韓国そして日本を巡回できる展覧会のいいアイデアをふたりは検討中だ。
※ CINE COSTUM'のホームページはwww.club-internet.fr/cine-costum で、彼らの活動に興味のある方は
cinecost@cybercable.fr までご連絡を(ただし、英語またはフランス語で)。
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