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2001.03.08 UPDATE

木村ひろみ
text & photo by Hiromi Kimura
“古いもの”とフランス人
フランス人は物を捨てない。フランスに来て驚いた山ほどあることのひとつだ。友達の家は「祖母からもらった椅子」だの「母親から譲り受けたセルロイドの人形」または「古物市で見つけた18世紀のリュート」などで溢れかえっている。仕事を通じては「ローマ人の食べ残した牡蠣殻」だの「テンプル騎士団(11世紀)の換金計算書」だの「ジュール・ヴェルヌの『80日間世界一周』の初版本」などを撮影しに行った。犬も歩けば骨董店、古本屋に出くわし、週末には必ずパリのどこかで「古物=ガラクタ市」が開かれている。
そもそも古いものに手を加え使い続ける、という精神の一番いい例はなんと言ってもパリの街並みだろう。建造されて数世紀経ってもびくともしない骨格の建物と共存する人々にとっては「十年一昔」と新しいものばかりを追い求める私たち日本人とは「古い」という時代の観念が違っている。
生誕から足掛け3世紀…とはいってもまだ105年しか経っていない映画にも「古いもの」は存在する。昔はどのスタジオにも美術部、衣装部が存在し、撮影が終われば衣装や道具類はそれぞれの部が責任を持って保存や再使用または始末をしていた。
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パリ11区にREGIFILMレジフィルムという映画専門の貸し衣装&道具屋がある。ここへ行くとナポレオンの帽子や衣装から19世紀の調理台、タクシーの電光看板、木製の棺…などが窮屈そうに同居している。とある撮影スタジオの大道具部に勤めていた創設者は、一本撮り終わるごとに破格値で譲ってもらう大道具や小道具を収集するのが趣味だった。のどかで古きよき時代の話だ。ただ、そのうちあんまり場所を取るようになったので、だったら人に貸してやれ、とレジフィルムという映画道具貸し出し専門店が誕生した。二代目の引退を控え、三代目への世代交代が近々行われる。素人目には「乱雑」で「古びた」彼らの分類法を若い三代目は果たして残していくのだろうか、それともコンピューターなどを導入した近代的な手段を選ぶのだろうか?
道具類はレジフィルム、衣装はPONTETポンテに行くのが一番だと教わって以来、友達との短編映画やテレビのための歴史再現シーンの撮影準備にはこの二件に出入りするのが常だった。ところがポンテが1993年にのれんを下ろして以来、衣装までレジフィルムに頼らざるを得なくなった…。「ざるを得ない」と敢えて書いたのは、ポンテの衣装に比べてレジフィルムのものはかなり痛んでいて、行く度にポンテの喪失を嘆いたからだ。ところが、この前公開されたクリストフ・ガン監督の作品《LE PACTE DES LOUPS》(狼の契約)の関連記事で、閉店時にポンテが売りに出した衣装をまるごと買った若い男性ふたりがいることを知った。
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