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第6回「衣装と小道具の貸し出し専門店」

第5回「パリの観客と日本映画の「今」」

第4回「割引パスと託児システム」

第3回「ヴィレット公園の野外上映」

第2回「検閲システムと不運な処女作」

第1回「フランス映画料金あれこれ」
 




2000.10.07 UPDATE



木村ひろみ
text & photo by Hiromi Kimura


第4回
割引パスと託児システム

日曜の午後の“ちびっ子映画大会”
あーあ、早く娘と映画が観たいな…


月日の経つのは早いもの、今日で娘が生まれてちょうど2ヶ月が過ぎた。出産前ぎりぎりまで映画館へ足を運んでいた私にとって、娘の誕生からの2ヶ月間はほんとうに「映画なし」の生活だったといえる。それでも、相棒や、幸い日本からかけつけてくれた母に子守りを頼んでは後ろめたい思いをしながら映画を何本か見た。合計13本という数字は、普通 のフランス人が一年間に見る平均本数より多いくらいだ。

最近の大ニュースといえば、この連載をはじめた時にお伝えした大手配給会社の割引パスが大きな騒ぎを引き起こしたと思ったら、今度はもうひとつの大手配給会社であるGAUMONT(ゴーモン)と独立製作配給会社の老舗MK2が手を組んでLE PASS(ル・パス)という割引カードを発売したことだろう(写 真)。このパスを持つと、UGCのILLIMITE(イリミテ)と同じように月額98フランでGAUMONTとMK2の映画館で好きなだけ映画を観賞することができる。両者の唯一の違いは、前者の契約期間が1年なのに対し、後者は半年のみ、つまり拘束される期間が半分だということだけだ。



これが割引カードのル・パス。月約1600円で映画観放題とは安い

価格戦争は規模をどんどん広げ、独立アートシアターの中にもイリミテまたはル・パスを受け入れるところが出てきた。これが続くと、フランスは先進国の中でもっとも安く映画を見ることのできる国になるだろう。つい先日、いつものように後ろめたさを感じながらイスラエル人監督アモス・ギタイの作品『KIPPOUR』を老舗RACINE ODEONに見に行ったとき、恥らうように目立たない場所に張られていた告知で同館がLE PASSを導入したことを知り、横っ面 を殴られたようなショックを受けた。

独立館も生き残るのが大変なのだろうが、もう少し誇りを持って頑張ってほしいな、と思う。この価格戦争の話をやはりジャーナリストで映画好きの友人とする度に、「映画を安売りするためのカードだけは決して使うまい」と固く誓い合っている。先週の水曜日はこの友人宅に娘を預けマチュ−・カソヴィッツの最新作『LES RIVIERES POURPRES』を見に行くのに、上映時間の都合がよかったこともあって久しぶりにレ・アールにあるUGCのマルチプレックス館へ足を運んだ。

平日の午後だから空いているだろう、とたかをくくっていた私が甘かった。映画館前には長蛇の列ができ「カードがあるのになぜ並ばなくてはならないんだよ!!」と大声で叫んでいるヤングが大勢いた。こういう特典のあるカードはあんまり多く出回ってしまうと、ありがたみが薄れるし、特典っていったい何だっけ???という疑問も出てくる。ようやく私の番になって、窓口の男性が「カードを持っていますか?それとも割引対象ですか?」と聞くので「いいえ、普通 料金です」と答えたのだけれど、ボタンを操作する男性の手が間違えたのかそれとも機械が狂っていたのか、なぜか「割引」料金のチケットが出てきた。窓口の男性は申し訳なさそうに、51フランのところを「35フランです」と言う。わたしも「あら、いやだ」なんて、言いながら内心「得したな」と喜んでいる。えらそうなことを息巻いていても我ながらいいかげんなものだ、と苦笑。



筆者・木村ひろみ氏が送ってくれた愛娘レア クレール 美弥・カタランちゃんの誕生カードです。可愛かったので載せてみました(編集部)

母が日本へ帰ってしまったので、昼間は再び娘と二人きりの生活に戻った。すると、映画を見に行くためには娘を預かってもらわねばならぬ 。だからさっきの友人がピンチヒッターとして借り出されたわけだが、彼女はセーヌ川の反対側に住んでいるから毎回お願いするわけにはいかない。どうしよう…と頭を悩ませていたとき、ふと「子供を預かってくれる映画館はないものか」という疑問をもった。そこで大手配給会社に問い合わせてみたところ、パリと近郊ではMK2のみが「映画館内に託児システムを設けることを検討中」という返答をくれた。ただ「検討中」といっても具体的には何も決まっていないという。同社は以前、パリ15区にある映画館前の託児所と契約を結び、映画鑑賞者の子供を預かる仕組みを試験的に設けたことがあるが、親が映画を観たい時間帯と託児所の営業時間が合わないため希望者も少なく、試みは短期間で終了したという。

預けることが不可能ならば、一緒に連れて行ってしまえ!!といっても、子供が作品を理解して楽しむことができなければ意味がない。おまけに、フランスの警察法では「3歳以下の児童はたとえ親が同伴してもスペクタクル(映画、演劇、コンサートなど)の場へ足を踏み入れることはできない」と定められている、ということが調べているうちにわかった。だから「子供向け映画」といわれる作品を映画館で観ることができるのは3歳からということになる。今秋で12回目を迎えるMK2の子供向けの映画特集FESTIVAL MK2 JUNIOR(MK2ジュニアフェスティバル)のプログラムの中では『ウォレスとグルミット』と『王と鳥』が最年少、つまり4歳からの幼児対象作品に指定されている。

どうやら私が娘と一緒に映画館の門をくぐることができるのはまだまだ先のことになりそうだ…とがっかりしていたら、家の近くにある独立館STUDIO DES URSULINESが2歳から6歳までの子供を対象にした映画上映を行っているという、うわさを耳にした。あれ、これって警察法とやらを違反しているのでは??? まあ、フランス人の決り文句には「禁止することは禁止されている」というものもあるし、矛盾だらけでいいかげんなのがフランス風なのだ、と思うことにしましょう。

CINE MARMAILLES(ちびっ子どもの映画)と名づけられたこの上映会は、毎週日曜の午後に開かれている。今日はちょうど日曜日、行ってみよう。いたいた…でも思ったほど多くなくて、10人いた子供の中で最年少は3歳でした。大人も子供も一律20フランを払って赤いビロードのふかふかした椅子に腰をかける。子供たちは嬉しそうにはしゃいでいる。そのうち館内が真っ暗になりソビエト産のアニメ上映が始まった。色と絵はきれいだし、無声でもわかりやすく楽しくてみんな大満足。嬉しそうな子供たちを見て、わたしも幸せな気持ちになった。映画はやっぱりこうじゃなくてはね。あーあ、早く娘と一緒に映画に行きたいな…。

編集部注:1フラン=約17円です



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